第52話 魔女、ダンジョンへ向かう

 自己紹介を軽く済ませて、四人でまずはギルドへ向かう。その間に聞いた話をまとめると三人はこの国特有の貴族の事情で家を出て、最近冒険者になったとのことだった。ランクは三人ともアイアンで、貴族特典とでも言えばいいのか、貴族の冒険者は試験があり、相応の実力があれば最高でシルバーまでならその力量にあったランクが貰える。普通ならずるいと思われるかも知れないけど、貴族がウッドからなんて悠長なことをするほうが時間の無駄だからね。実技の他にも筆記や採集の試験もあるようで、合格できる実力があるなら問題ないということらしい。


 ウッドが街の中の依頼、ブロンズが街の中や外の雑用関係、アイアンになってやっと魔物の討伐や素材の収集と考えると、貴族の殆どがアイアンからのスタートというのは妥当だと思う。ここのギルドはあまり大きくない、街のとは違って出張所みたいな扱いらしい。街のギルドのような依頼の張られた掲示板などもないので、ギルドの中は冒険者のたぐいも少なく閑散としている。カルロが代表して受付の女性に色々聞いてくれている。この辺りの治安やおすすめの宿に、お勧めの食事処や酒場の情報にダンジョンまでの行き方なんかも聞いている。


「エリーも僕達と同じ宿で良いですか?」


「聞いた話だとこの村じゃ一番ましな宿らしいから同じでいいよ」


「わかりました、それでは早速宿をとって、一度片方のダンジョンに様子見にでも行ってみましょうか」


 四人でギルドにほど近い宿で部屋を取る。部屋割りはカルロとアーサ、私とセーランになった。出会ったばかりの私とセーランが一部屋ってどうかと思ったけど、一人部屋が余ってなかったのと二人部屋も余りがなかったから仕方ない。私と一緒でいいのかセーランに確認を取ったけど、流石に三人部屋を一人で使うのはもったいないし、男性と同じ部屋は対外的によろしく無いのでということで同室を了承してくれた。部屋はベッドが2つとテーブルがベッドの間に一つ、小さめのクローゼットが2つあるだけの至ってシンプルな作りだった。流石にこの規模だとお風呂がないのは仕方がない。


 部屋を確認してセーランは装備を整えた後、荷物をクローゼットに押し込んで一緒に部屋を出る。私の方は着替えとか必要ないからそのまま、荷物もポシェットに入っているので問題はない。セーランが着替えをしている時に少しだけお話した。そのおかげでセーランが睨んできた理由も知れてセーランの誤解も解けた。話の中身はご想像におまかせしますが青春だねーとだけ言っておきましょうか。


「お待たせ」


「いえ僕たちも今来たところですよ。それでは今回は軽く様子を見る感じで行ってみましょうか」


 近くにある初級のダンジョンまでは、ここから10分ほど歩いたところにあるらしい。


「えっと、エリーはその格好からして魔術師ということでよろしいですか?」


「そうだね、私の場合は基本的に魔術師扱いでもいいけど、剣も使えるし斥候のマネごとも少しはできるよ」


「それでは僕たち三人の連携などを見て、僕たちに足りないところを補助して貰う形でお願いしてもいいでしょうか」


「わかったわ、まずはそれで行ってみましょうか」


 三人の実力も知りたいしまずはそれでいいかな。ちなみにカルロは剣士でアーサは槍と盾を使う騎士、セーランが風神の神官とのことらしい。


 ダンジョンの前に着くとそこそこの人数がダンジョンの順番待ちで並んでいるようだ。今から入るダンジョンは全5階層で、出てくる敵は上階にはゴブリンが中心として出てきて、下層に向かえばオークやオーガが出るという話だ。ボス部屋にはゴブリンにオークとオーガの混合集団と戦うことになると冊子に書かれていた。なんだか攻略本を見ているようで微妙な気分になったけど、あえて見ない縛りをしても仕方がないので活用させてもらうことにする。ダンジョンの入り口から少し離れたところには買い取り所があるみたい。あとは冒険者パーティー以外にもウッドかブロンズかわからないけど、子どもが複数人いる。


「それでは早速行ってみましょうか、今日は様子見ということで2階層か3階層あたりまで行けたらいくという感じにしましょう」


 私を含めセーランとアーサもうなずく。セーランは初めてのダンジョンということで少し緊張しているみたいだね。逆にカルロとアーサは緊張とかしていないように見える。ダンジョンの入り口は、壁に装飾のされた門のような見た目をしている。扉のない門とでも言えばわかるだろうか、その門の部分が真っ黒になっていて先が見えない。前に並んでいた二パーティーの後ろに並ぼうと歩いていると一人の子どもに声をかけられた。


「ねえ、お兄さん達ワタシを雇わない? このダンジョンなら五階層まで案内できるよ」


 見た目はこの辺りに立っている子どもの中でも比較的きれいな格好をしている。白くて短い髪だったので一瞬少年かと思ったけど、よく見ると女の子だった。荷物持ちというわけではなくて、いわゆる案内人という感じなのかな?

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