第19話 魔女、ニーナちゃんを泣かす

「それじゃあ、ニーナちゃん私の部屋行きましょうか」


「エリーさんよろしくお願いします、パパママおやすみなさい」


「エリー、ニーナの事頼む、ニーナもお休み」


 大将とアーシアさんがニーナちゃんに気づかれないように頭を下げてくる。私もニーナちゃんに気づかれないように頷く。


 大将とアーシアさんに寝る挨拶をしてニーナちゃんを部屋へ連れ込む。うへへへへ、今日はこの幼い少女を堪能するのだよ。冗談です変な事はしないよ、まずはニーナちゃんの緊張を解すために色々お話でもしようかな。


 部屋は真っ暗なので魔法で薄い明かりを灯すと部屋が明るくなる。


「うわー、エリーさんこれって魔術ですか?」


「違うよー、これは魔法だよ」


「魔法ですか? 魔術とは違うんですか」


 二人ならんでベッドに腰を下ろす。


「まあね、ちなみに魔術だと同じことをするのにもこうなります」


 指を1本立てて、呪文を唱える。


「光よ」


 指先に魔法と似たような光が生まれる。


「これが魔術よ、ニーナちゃんには違いが見えているよね」


 指を振って魔術の光を消す。


「な、なんのことですか」


 びくりと肩を震わせて視線を下に向けている。


「いつからなのかは分からないけど、大変だったね」


 私はニーナちゃんの頭を抱えるように抱き寄せて、ゆっくりと何度も何度も頭を撫でる。


「うっうぅぅぅあぁぁぁぁー」


 部屋の外にニーナちゃんの泣き声が漏れ出さないように消音の魔法をかけている。別にいかがわしいことを目的として魔法をかけたのではないからね。何度も背中をなでなでぽんぽんとしつつ頭を撫で続ける、さらさらで綺麗な金の髪はさわり心地が良いね。


 暫く泣き続けて私の服はニーナちゃんの涙で濡れている。よしこの服は永久保存決定だね、乙女の涙なんてなかなか手に入る物じゃないからね、決して不順な動機があるわけじゃないですよ。


「ぐず、ごめんなさいエリーさん」


 取り出したハンカチを渡してあげると、目元を拭ったあと鼻を噛んでいる。ハンカチを受け取ってとりあえずポシェットに放り込んでおく。


「良いのよ、落ち着いた? 怖かったんだよね人と違うことが、大将やアーシアさんにも相談できなかったんだよね」


「はい……」


「そうだね、ニーナちゃんの見ている世界は私も見ることが出来るんだよね」


「そうなんですか!?」


「うん、というよりもねその能力はね、錬金術師になるにはあったらすごく便利だし、無いとかなり苦労するけどね」


「錬金術師ですか?」


 首を傾げている。うんかわいい、ついつい頭をナデナデしてしまう。


「そうだよ、ちなみに数字で言うならニーナちゃんがレベル3として、錬金術師が最低限必要なのはレベル2って所かな、ちなみに大将もその能力を持っているよ、レベルにすると1だけどね」


「パパも持っているんですか」


 そうなんだよね、大将もニーナちゃんが持つ”見る”能力を持っている、通称としてスキルと呼ばれるものだけど、レベル1やレベル2なら努力と気合いと根性があれば取得できるたぐいのものだったりする。


 私のローブに隠匿効果があるのを見抜いたのも”見る”能力を持っていたからだろうね。レベル1なんて有るか無いか気づけ無い程度なので最初は気づかなかったけど、ニーナちゃんをひと目見てよくよく観察してみて気づいたんだよね。


「ちなみに、ニーナちゃんがその能力を隠しているのも大将は気づいていたみたいだよ」


「そうなのですね」


「もう一回聞くけど、いつくらいからなのか覚えている?」


「色々な人の体からモヤモヤっとしたものが見えるようになったのは、一年ほど前だったと思います」


「一年かー、大変だったね、でももう大丈夫だよ、私がなんとかしてあげるから」


「治るのでしょうか」


「治るというのとは違うかな、使いこなすといったほうが良いかな、言ったでしょ私も同じ世界を見ることが出来るってね、だから任せておきなさい」


「そういえばエリーさんだけはあのモヤモヤが全く見えないのですけど、どうしてですか?」


「そうだね、まずはあのモヤモヤが何かということを説明しないとね、まだ眠くない? 大丈夫? 大丈夫ならこのままお話を続けるけど」


「大丈夫です、お願いします」


 ニーナちゃんが居住まいを正して頭を下げてくる。


「そうだね、それじゃあまずはモヤモヤが何か、きっとニーナちゃんはもう気づいていると思うけど、あれは魔力なんだよ、さっき私が魔術を使う時に魔力の流れを目で追っていたでしょ」


「えっと、モヤモヤのないエリーさんからモヤモヤ、えっと魔力が急に流れだしたのが見えました」


「ちなみに、私から魔力が出ていないのは完璧に制御しているからだよ」


「そうなのですね、やっぱりすごいことなんですよね、エリーさんみたいに魔力が見えない人って見たことないです」


「それは私にもわからないかな、探せばそこそこいると思うけどね」


 かくいう私も魔力制御が完璧な人は、師匠と他数人にしか出会ったことがないので何とも言えない、あの人達も普通の人と言えないからね。


「つまりはね、ニーナちゃんの”見る”能力というのは、まずは魔力を見ることが出来るという事、次に素材の含んでいる魔力量が見える、ここまでできれば錬金術師になることは出来るね、さっきも言ったようにこの辺りがレベル2だね」


 ニーナちゃんは真剣な表情で私の話を聞いている、真剣な顔もかわいいなー。

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