第18話 魔女、三人組にバラす

 いやーお風呂はやっぱり良いものだね、すっきりさっぱりだよ。わたし達と交代するように今はガーナ、サマンサ、ミランシャがお風呂を使っている。洗髪剤と石鹸も渡しておいたけど、渡すときにサマンサが何か聞きたそうにしていたのだけどあえてスルーをしておいた。


「おいエリー、アーシアとニーナの髪がすごく輝いているんだが何しやがった?」


「何しやがったって人聞きの悪い事言わないでくださいよ、ただ私が作った洗髪剤を使っただけですよ。どうですかアーシアさんすごくきれいだと思いません? 惚れ直したんじゃないですか? なんなら今日はニーナちゃん預かりましょうか?」


「おま、なに言ってやがる……、あーそのなんだ、ニーナの事頼んでいいか?」


 大将の表情は真剣で、その目は切実に何かを訴えかけようとしているようにも見える。


「わっかりました、ニーナちゃんは今晩お預かりしますね、それと大将もちゃんとお風呂に入って綺麗にしてくださいよね、アーシアさんに嫌われちゃいますからね」


「お、おう、いや、そうじゃない、ニーナのこと気づいているんだろ?」


「まあそうですね」


「なら改めてよろしく頼む」


 大将が真摯に頭を下げてくる。


「私と大将の仲じゃないですか遠慮は無用ですよ」


「あのな、エリーお前とはまだあったばかりだろうが」


「そうでしたっけ? まあ色々な面で共犯者ですからね」


「はぁ、たしかにお前とは数年来の友人のような、同年代をいや、年上を相手にしているような気になるからな……エリーお前年齢偽ってねえか?」


「なにを失礼な、女性に年齢は禁句ですよ、それに私は永遠の17歳ですからね」


「永遠のってお前それって、なんとなくそんな気はしていたが、さすがは魔女の弟子って所か」


「そういう大将の察しのいい所とか好きですよ」


「お前に好かれてもな、ニーナには変なことするなよ」


「それはもう、安心して任せてください」


 というわけで早速ニーナちゃんをお誘いしに行きましょうか。


「ニーナちゃん、今日はお姉ちゃんと一緒に寝ましょう、ちゃんと大将の許可は取ってるからね、アーシアさんもいいですよね」


 こそっとアーシアさんの耳元で「大将がアーシアさんと今日は二人でいたいって言ってましたよ」と言ったらアーシアさんは少しだけ嬉しそうに頬を染めて、ニーナちゃんと寝ることを了承してくれたしニーナちゃんも楽しそうに抱きついてくれた、かわいいなぁもう。


 しばらくして三人組が戻ってきたので、大将が用意してくれた食事を食べる。その間に大将にはお風呂に行ってもらった。お湯の出し方や石鹸などの使い方はアーシアさんに任せておいた。


「ねえ、エリーって本当は何者なの?」


 食事中にガーナがストレートに聞いてきた。


「まあそうですね、誰にも言わないって約束してもらえますか? 大将とアーシアさんは知っていますけどミランダさんとサーラには言ってないので内緒にしててほしいんですよね、ちなみに知らないほうが良いかもしれませんよ?」


「そう言われると聞くのはためらってしまうね」


「私は知りたいですね、特に洗髪剤のことをですけど」


 ガーナと違い、サマンサは商人の娘らしくやっぱりそっちが気になったか。


「わたしも知りたいかな、あんなお風呂どうやって作ったとかもね」


 ミランシャは聞きたい派閥所属みたいだね。


「分かった、誰にも言わない、信仰する神に誓うよ」


「私も自らの神にお誓いいたします」


「わたしも誰にも喋らないことを神に誓います」


 まあそこまでしなくてもいいのだけどね、魔女だとか魔女の弟子だとか言っても信じられるかどうかはわからないし。


「そこまで覚悟があるのならお教えしましょうかね」


 この世界の大半の人は神の存在を信じているし、神に誓うと言うことは、命をかけるというのと同じようなものなんだよね。


「魔の森の奥に何が有るかご存知ですか?」


「魔の森の奥? それって──」


「世界に4人いる魔女様のお一人、導きの魔女と呼ばれる方がいると言われていますわね」


「えっ、魔の森の魔女って本当にいるの? おとぎ話かと思ってた」


「ミランシャあなたそれ本気で言ってるの? ガーナでさえも……、ガーナも同じなのね」


「「あはははは」」


 サマンサの世界に4人って言う情報は古いんだよねーなんてことは言わない。


「こほん」


 わざとらしく咳払いをして見せるとじゃれ合いをやめる3人。


「うん、まあそうだね、サマンサの言う通り魔の森の奥には魔女の一人が住んでいます、そして私はその魔女の弟子を名乗っています」


 そう魔女の弟子と名乗っているのだよ、決して嘘は言っていない。


「……」


「……」


「……」


「おーい、どうしたの3人とも固まって」


「「「えぇーー」」」


「いきなり大声出さない」


「ほ、本当に魔女の弟子なんですか!」


「そうだよー」


「じゃあ、あの洗髪剤や石鹸は魔女様の作ったものなのですね?」


「あれは私が作ったものだよ」


「えっとえっと、魔女って本当にいるんですね」


「いるよー、今もピンピンしているよ」


 サマンサ以外はそういうこともあるのか程度の感想のようだ、サマンサは何か思案しているみたいだけど、洗髪剤と石鹸の事なんだろうね。


「そういう事なので、3人とも私が魔女の弟子だということは内緒という事で」


 大将がお風呂から戻ってきたので、そこでこの話は締めておいた。一応口止めはしているけど、別に魔女の弟子という事はバレてもいいとは思っている。私が魔女の一人だという事さえ知られなければね。

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