第11話 魔女、土下座する
「ば、ばかそんなっじゃねーよ、サーラに変なこと言うなよ」
「それではギースさんは参加って事で良いですね、場所は宿木亭になります」
「あーあそこか、まあ女の子一人だとあそこが一番安心だからな、ギース先に上がっていいぞ、引き継ぎは俺の方でやっておく、ちゃんと汗を流してマシな服くらい着て行けよ、これは命令だ」
「ハッ! 了解いたしました」
「それじゃあ嬢ちゃんギースの事を頼むわ」
そう言ってジョシュ兵長は門の横にある詰め所のようなところへ向かっていった。
「それでは先に行って大将に話しておきますね、時間は七の鐘がなる頃になりますから遅れないようにしてくださいね」
「おうわかった、世話になる」
「いえいえ昼のお礼ですので、それでは」
ギースさんに手を降って別れさっそく宿に向かう。宿の方向は魔法で分かるので迷うこと無く無事に帰りついた。
「大将ただいま戻りました」
「おう戻ったか、飯はすぐ食うか?」
「それなんですけど、ちょっとお世話になった人たちを招待したいんですけど良いですか?」
「それは構わねーが何人くらいだ?」
「えっと、ミランダさんにサーラさんと門兵のギースさんの3人ですね、時間は七の鐘がなる辺りにしています」
「その3人なら構わねえか、だがなここに男は連れ込むなよ」
「そんなつもりないですよ、今日お世話になりましたしその御礼です、ですので食費は私が出しますし、何ならお酒の代金も出します」
「そうか、なら代金は銀貨3枚だ、その代わりエールなら飲み放題にしてやる」
「じゃあこれでお願いしますね」
収納ポシェットから銀貨を取り出し3枚渡す。
「それじゃあ時間まで部屋で休んでな、体を拭いたりするならお湯は用意してやる」
「お湯ですか?」
「いや、気温は高いとはいえ水で体を拭くのは嫌だろ」
「体を拭くですか……、あっ大将後で少しお話が」
「嫌な予感がするが乗りかかった船というやつだな相談には乗ろう」
「ありがとうございます、後お湯は大丈夫です、浄化の魔法が使えるので今日はそれで我慢します」
私は自分を中心に宿を包むように浄化魔法を使った。ふふんこれはサービスですよ。大将を見るとため息をついて頭をガシガシ掻いている。
「もう何も言わん、だがなバレるような使い方はするなよ」
「はーい、気をつけまーす」
「それとだな今日は貸し切りにしておく、七の鐘なら他の奴らも戻ってくるだろう、俺の娘も含めてその時紹介しよう」
「他の宿泊客ですか、私と同じ駆け出しってことですよね?」
「お前と同じという所に疑問があるがそうだな、まだここに来て半年くらいの駆け出しだ」
「それは楽しみですね、それでは一度部屋に戻って休んでおきますね」
「そうしろそうしろ、俺は追加で料理を用意しておく、酒も飲むだろうしつまみもな」
「大将わかってるー、晩ごはん楽しみにしておきますね」
「ああ、お前の舌にあうかはわからんが、素材が良いからな期待してろ」
ふんふんふーんと鼻歌を歌いながら部屋に入ってローブを脱いで椅子にかけておく。備え付けの魔導ランプに火を灯すと暗くなりかけている部屋が明るくなる。収納ポシェットからメモ帳を取り出すと、とりあえず今日街を見回って気づいた事をサラサラっと書いておく。
お金の大体の価値、この街の食費が安い謎、そのくせ北の村々は困窮しているとかそんな感じのことをすらすらと。なんとなくだけど、食費に関してはこの国の中ならだいたい同じような気がする。露天ではなくて地面に敷いた布の上に商品を並べて売っている、付近の村人だろう人たちの商品も似たような値段だったし。
考えられるのは北の方にある寒村は別の国な可能性が高いのかな、まあその辺りは大将にでも聞けばいいか。それよりもお風呂だね、大将にお願いして井戸の近くにお風呂を作らせてもらおうと思う、これは私にとって死活問題だ、絶対権利を勝ち取って見せる。
そうこうしていると鐘の音がかすかに聞こえてくる、これが七の鐘でいいのかな、耳を澄ますと階下に人の気配が増えている。魔導ランプの火を消してポシェットを掛けると部屋から出て鍵をかける。
階段から階下を見ると、知っている人と知らない人がワイワイガヤガヤ会話をしている、9割が女性でギースさんはきっと居場所に困ったのだろうか、大将と一緒になって料理を運ぶのを手伝っているのが見えた。
「ミランダさんサーラさんいらっしゃい、えっとそちらの方々は初めましてですね、エリーと言います、今日からこの宿にお世話になります、よろしくお願いします」
「エリーさんですね、はじめまして私はパパとママの娘でニーナと言います、よろしくお願いしますね」
礼儀正しく頭を下げるのは、10歳くらいのアーシアさんにそっくりな女の子だった。
「よろしくねニーナちゃん」
自然に頭を撫でてしまった。めちゃかわいい、頭を撫でられてえへへと笑っている。
「大将、私にニーナちゃんをください、絶対に幸せにしますから!」
「お前そんなに死にたいのか」
全身に闘気を纏って睨んでくる。
「冗談ですごめんなさい」
高速で土下座をして許してもらいました。
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