第10話 魔女、食事に誘う
ぶらぶらと屋台を見ながら散策をしている。屋台で売っているものの値段を見ると、謎の肉を使った串焼きが1本で銅貨1枚という感じだから、大将のあの野菜炒めが余り物とは言え銅貨3枚はかなりお得だったかな。
他には果実水が銅貨1枚、何かのスープが銅貨3枚、黒パンが銅貨1枚などなど、食事は全体的に安い感じなのかな? この値段設定でもこの街から北の方にある開拓村では食べるに困る状況なのは少し疑問だけど、他にもなにか理由があるのだろうね。
まあ知らない村の事を考えても仕方ないし、下手な事を言って勘ぐられるのも面倒くさいからなんとか誤魔化す方法を考えないとね。一通り大通りの屋台を見終わったので、次はどうしようかなと考えた所で丁度冒険者ギルドが目に入った。
ギルドの中は最初来たときよりも人が増えていた。食堂のような所を見てみると複数のグループが酒盛りをしている。受付の方はそれほど混んでいないようなので、空くのを待ってみることにして掲示板に貼られている依頼書を見てみる。
ウッド級の依頼は見当たらない、ブロンズ級は薬草やハーブ類の収集が少し、アイアン級になって常設依頼のゴブリン退治があるくらいだった。そしてシルバー級の所はオークの肉やシルバーウルフの皮の買い取りなんかが常設依頼として残っているだけだった。
そしてゴールドの方を見てみると、唯一張られていた依頼に目が行った。ゴールド級パーティー推奨、特殊個体のオーク、冒険者から奪ったと思われる大剣を所持している。東の街道での目撃情報あり、依頼元が冒険者ギルドと商業ギルドの連名となっている。報酬は大金貨1枚とかなり大盤振る舞いなのに残っているということはどういうことなんだろうね。
それに大将の話だとシルバーランクの依頼だと言ってたけど今はゴールドになっているみたいだね、情報的にはこんなものだった。後はゴールド以上の依頼は貼られてないのか見当たらないなと思った所で受付が空いたみたい。
「ミランダさん、サーラさん先程はありがとうございます、無事大将の所でお世話になることになりました」
「エリー良かったわね、サーラがなんだか大将の様子がいつもと違ったって言っていて心配してたのよ」
「ほんと、今日の大将は何だったんでしょうね」
「あはは、右も左も分からなかったので助かりました」
「良いのよ、これもギルドの仕事みたいなものだからね」
「あっ、お二人共夜はご飯どうされます?」
「夜はもう少しで遅番と交代になるけど、エリーちゃんも一緒に食べる?」
「いえ、大将が今日はいい素材が入ったと言ってたので、お金は出しますからご一緒にどうかなと、街の事も色々教えてもらいたいのでよろしければですけど」
いい素材が入ったというのは本当のことだし、大将も期待してろって言ってたからね。
「はーい、私は良いよ、でもお昼に続いて出してもらっても良いのかな、エリーちゃんも色々物入りでしょ?」
「その辺りは大丈夫です、まだ小さい魔石は残ってますから」
「それでは私もごちそうになろうかしらね、時間は七の鐘がなったくらいでお願いするわ」
「七の鐘ですか?」
「そうよ、今の時期だと暗くなった辺りで鐘が七回鳴るから、それが七の鐘よ」
七の鐘って事は夜の七時と言うことでいいのかな、時計って見たこと無いけど鐘の音で時間を把握している感じなのかな。
「あっそうだ、ジョシュさんとギースさんも誘っていいですか、ここまで送ってくれましたし、今後もお世話になりそうですからね」
「それは良いかもしれないわね、特にジョシュ兵長とは仲良くしておいたほうがいいわよ、多分参加はしないでしょうけど一度声をかけておくのは良いかもしれないわ」
「わかりました、それでは北門に行ってみますね、大将には晩ごはんを日暮れに合わせてもらえるように言っておきます、ではお待ちしてますね」
丁度受付に帰ってきた冒険者が向かってきているので邪魔にならないように受付から離れる。受付に付いた冒険者が「見ない顔だな」とミランダさんに話しかけているのが聞こえたけどそのままギルドを出て北門に向かう。
北門は来たときと違い人がごった返していて入場整理で兵士の人が忙しそうにしている。その中にはジョシュさんとギースさんの姿も見えた。暫く待っていると門が閉められて大きな閂がかけられる。
「君は昼間の、こんな所でどうしたんだい? 今日はもう外に出れないし、夜に外をうろつくのは感心しないぞ」
門が閉まるのを眺めていると、私に気づいたようでジョシュ兵長とギースさんが近寄ってきて話しかけてきた。
「いえ、ジョシュ兵長とギースさんに少しお話がありまして」
「俺と兵長に?」
「はい、街に入る時お世話になったのでお食事でもどうかなと思いまして、ギルドの受付のミランダさんとサーラさんも一緒なんですけど」
「あー、すまんな嬢ちゃん、俺は嫁さんが待っているから遠慮させてもらうよ、ギースお前は行ってくると良い、サーラちゃんと仲良くなるチャンスだろ」
「な、な、何を言うんですか、俺は別にサーラのことなんて」
「へー、ふー、ほー、ギースさんはサーラさんの事が……ですか」
うふふふふ、これはお姉さんが恋の仲介をしてあげるべきかな……、ごめんなさい無理です、だって元の世界でも異性とお付き合いなどした事ないですから。
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