第12話 魔女、飲んで食べる

「あはは、面白い人だね、オレはガーナまだ駆け出しだが最近ブロンズになった、よろしくな」


 暗めの赤い短髪の見た目15歳くらいの女の子がいて、身長は私よりちょっと小さいくらいかな。


「ガーナさんですね、よろしくお願いします」


 立ち上がって膝を払いつつ挨拶を交わす。


「私はサマンサと言います、わたしも最近ブロンズになりました、ガーナとこちらのミランシャと一緒にパーティーを組んでます」


「最後にわたしかな、ミランシャです、ガーナとサマンサとパーティーを組んでます、よろしくね」


 サマンサさんは、落ち着いた感じの薄い金色の髪を肩で揃えているローブでよくはわからないけど結構良いものをお持ちのようだ、ミランシャさんは茶色の髪をサイドテールにしている服装を見るに斥候かな?


「自己紹介はそれくらいにしてガーナとサマンサにミランシャは着替えてこい、汗を流すならそこにお湯を用意しているから持っていけ」


「「「はーい、大将いつもありがとうございます」」」


「じゃあエリーまた後で」


 3人はお湯の入った桶を持って2階に上がっていった。


「エリー今日はお招きありがとうね」


「エリーありがとうね、今日はごちそうになるわ」


「いえいえ、これからお世話になりますので、エールも飲み放題にしてもらったのでいっぱい食べて飲んでくださいね」


 ミランダさんとサーラさんには先に座っていてもらい、私は大将やアーシアさんとニーナちゃんに混ざって飲み物や食事を運ぶ。ギースさんはミランダさんとサーラさんが座った時点で送り出しておいた、はっはっは両手に花とは羨ましい限りですな。


 料理を一通り運び終わった頃には、着替えをすませた3人も降りてきて席について、大将やアーシアさんにニーナちゃんもそれぞれ席につく。今日は私の歓迎会みたいなものと言うことで、大将たちも一緒に食事をする事になっている。


 全員席に付き、飲み物を確保した所で私は立ち上がり、みんなの注目を集める。


「えー、今日は街についたばかりで右も左もわからない私を助けていただき、お世話になったミランダさん、サーラさん、ギースさんをお食事に誘わせていただきました。ついでに私の歓迎会も合わせてのお食事会となりました。大将にアーシアさん、ニーナちゃんは暫くお世話になります。ガーナさん、サマンサさん、ミランシャさんには冒険者の先輩として色々と教えていただけると助かりますのでよろしくお願いします」


 一気に話して一度席につく。


「それでは皆様、それぞれが信仰する神に感謝の祈りを」


 ちなみに私自身は無宗教無神教なので、祈る真似だけして心のなかでいただきますと唱えている。みんなお祈り終わらせた所で、エールを持って立ち上がる。


「今日は大将がいい素材が入ったとの事なので大いに飲んで食べてください、では乾杯!」


「「「乾杯」」」


 それぞれが隣の人とエールの入った木製のジョッキを勢いよくぶつけ合って一口飲む。店内には一つのテーブルを4人で使う感じのものが3つ有る。今回はそのテーブルを中央に寄せて適当に椅子を並べている。さっそく開いている席に座ってから並んでいる料理に目をやる。


 串焼きにスープに新鮮な野菜、手羽先にチキンステーキに照り焼きやささみなどなど色々と用意されている。バイキングみたいに適当に大皿に盛られているので好き勝手とるスタイルになっている。


「大将すっごく美味しいけど、これってなんの肉なの?」


 ガーナさんが串焼きをもしゃもしゃしながら大将に聞いている。


「あん? なんだって良いだろ、詳しくは聞くなたまたま手に入った物だからな、お前らみたいな駆け出しじゃ暫く食えんだろうから食えるだけ食っとけ」


「あら本当に美味しいわね、大将とアーシアさんの腕が良いのはいつものことだけど、素材が良いのでしょうね、いつもより美味しい気がするわ」


「ですね、これだけ美味しいと屋台で買い食いできなくなっちゃいます」


 サマンサさんとミランシャさんも、絶賛の美味しさのようだ。私も早速串焼きを食べてみるとめちゃくちゃ美味しい、さすが死使鳥の肉とも言えるし大将の腕がいいのだろうね、あと調味料の使い方がうまいんだろうね。


 スープもトリガラを使ったのか、さっぱりの中に旨味が出ていて美味しい。昼間の野菜炒めの時も思ったけど調味料のレシピ教えてもらおうかな。他の人に目をやってみるとミランダさんが大将たちの方に合流して、サーラさんとギースさんを意図して二人きりにしたようだ。


 とりあえずあそこの席は放っておくことにして、大将たちに合流する。


「エリー食っているか」


「食べてますよー、すっごく美味しくて大満足ですよ、この調味料って秘伝かなにかですか? すごくいいので教えてほしいんですけど」


「あーこれか、調味料全般はアーシアの手作りだな、知りたければアーシアに教えてもらえ」


「ほうほう、そうなのですね、アーシアさん今度教えて貰ってもいいですか?」


 アーシアさんは、少し考える仕草をして頷いてくれた。


「やった、よろしくお願いしますね」


 エールはセルフで入れる事になっているので、おかわりをするためにカウンターの方へ向かうとミランダさんに声をかけられた。


「ねえエリー、このトリ肉ってもしかしてあなたが提供したものじゃない?」


「ふぇ……、どうしてそう思ったんですか?」


 目を見ると冗談で言ったわけではないようだ、ここはなんて答えるべきだろうか。油断しているつもりはなかったのだけど、大将といいミランダさんといい勘が良いと言うか洞察力があるというか、森の外って油断ならないなと改めて思った。

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