第2話
信号への通りもこちらと同じように青白いLEDの照明が一定の間隔で続いている。その一番奥、信号に一番近い照明が点滅している。
点いて消えて、すぐに点いて、すこし消えて、また点いて。
点いて消えて点いて消えて点いて消えて点いて消えて点いて消えて点いて消えて……
しばらく消えていたと思うと、赤い色で点灯する。
本来白くしか光らない街路灯が真っ赤に灯った。
なんで?
身体が固まる。
すると、今度はその手前の照明が白から赤にかわる。
そして、その次はもう1つ私の近くの照明が赤くかわる。
人の歩く速さで、血のような真っ赤な光が近付いてくる。
来る。逃げなきゃ。
赤い照明は私を追いかけてくる。逃げなきゃ。
私が早歩きすると、追いかける光は私の早歩きの速さで追いかけてきた。
私が走ると、赤い光も同じ速さで。
アパートに着くと、ドアの鍵を閉めてチェーンロックをかけた。私の部屋は相変わらずの安い蛍光灯の薄白い光に照らされていた。隣の部屋からは下手なギターの音がいつも通り聞こえてきた。おそるおそる窓から外を見てみると、先ほどの赤い光が嘘だったかのように、青白いLEDの光が点々としていた。
「たすかった」
さっきのサイダーを飲もうと思ったが、途中で落っことしてきたのだろう。手にもエコバッグにも無かった。仕方なく台所で水道水をコップいっぱいに貯めて一気に飲み干した。もう一杯水道水を飲んでようやく落ち着く。息を落ち着ける。
コップを濯いで、ザルに立ててから、扉の郵便受けを見るといくつかの封筒やらが入っていた。生命保険の更新通知、電気代の納入書、それと。
?
さっきどこかに忘れたサイダーが水滴を点けたままドアの内側のかごに入っていた。ドアの狭い隙間からペットボトルが入ってくるはずがない。かといって、家に入ってきたときには持っていなかった。なぜ、部屋の中に?
キャップを開けると、勢いよく空気が抜け、泡がしゅわしゅわと音を立てた。
泡の音が落ち着いたときには、隣の部屋のギターの音も止んでいた。かわりに聞いたことのある音が聞こえてきた。この音は――。
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