第17話 並んだのよ
お風呂を堪能したアビーは湯舟から出ると、温風でサッと乾かしてから衝立を外して外に出る。
「お、出て来たな。じゃあ、次はワシだな」
「ドン爺、お湯が温くなったから、換えた方がいいよ」
「そうか。じゃあ、コー爺頼む」
「分かった。ちょっと、待ってろ」
コー爺が給湯用と排水用の配管を繋ぐと、まずは湯舟の中のお湯を流す。
「よし、全部出たな。コー爺、頼む」
「分かった」
湯舟から残り湯が全て排水されたことを確認したドン爺はコー爺に頼むと、給湯管から新しいお湯が出てくる。
「お、出て来たな。どれ、温度は……ん、いけるな」
「じゃ、のぼせないようにね」
「そうじゃな。ありがとう、アビー」
ドン爺が衝立を戻すと、コー爺がアビーの元へと近寄ってくる。
「次は俺が入るつもりだ。アビーも意外と長く入っていたな。そんなに気持ちよかったのか?」
「うん。そうだよ。もう、体がとろけるんじゃないかと思ったくらいだよ」
「そんなにか。じゃあ、ドン爺も長いかな」
「多分。そうだね」
「しょうがないな。じゃあ、出るまで作業でもしているわ」
「じゃあ、僕は家に入るね」
「ああ、婆さん達にはちょっと遅くなるって言うといてくれ」
「うん、分かった」
家に入ると、ジュディにさっきの音はなんだったのと聞かれたので、地面からお湯が出たからお風呂を作ってもらったと正直に答える。
「え? 地面からお湯?」
「うん。今、ドン爺がお風呂に入っているの。次は、コー爺がお風呂に入るから帰るのは遅くなるって」
「え? お父さん達がお風呂に入っているの?」
「うん、そうだよ。僕も先に入らせてもらったけど、気持ちよかったよ」
「え? アビーも入ったの?」
「うん、入ったよ。お母さんも入ったらいいよ」
「え? でも、まだお外でしょ?」
「うん、そうだよ。でも、ドン爺達が衝立で隠してくれたから平気だよ」
「そ、そうなんだ。でも、外で裸になるのはね~」
「なんの話をしてるの?」
「お母さん」
「ジョディお婆ちゃん、お風呂だよ」
「アビー、お風呂はまだだよ。言ったでしょ」
「それがね、お母さん。お湯が出たんだって言うのよ。どう思う?」
「お湯だって? 本当なの?」
「本当みたいよ。今はゴードンさんが入っているって。その次はお父さんが入るんだって」
「あら? お父さんが入るの? なら、私が入ってもいいわよね」
「なんの話なの?」
「ソニアお婆ちゃん」
「ソニアさん」
「ソニア」
ソニアに今までのことを話す。
「じゃあ、今はゴードンが入っているんだね」
「そうだよ。まだドン爺が入っているハズだよ」
「そう。じゃあ、見てもいいわよね」
「「「え?」」」
ソニアはそう言うと家の外に駆け出す。
「あ、行っちゃった」
と、思っていたらすぐに戻って来た。
「アビーの言うことは本当だったよ」
「え~じゃあ、お風呂に入れるの?」
「いや、それは無理みたい」
「え? だって、ゴードンさんが入って、その次はお父さんなんでしょ。なら、ちょっと待てば入れそうじゃない」
「……理由は見た方が早いよ」
ソニアがそう言うので、ジュディとジョディは家の外に出るとお風呂らしき物を作った場所を見ると、板で囲った場所にずらりと人が並び、その先頭にコーディが立っているのが分かった。
「「え、どういうこと?」」
ジュディ達は並んでいる作業員達を横目にコーディの元へ向かう。
「ちょっと、お父さん。どういうこと?」
「どういうって風呂に入るつもりだが?」
「そうじゃなくて、なんでこんなに並んでいるのかってことよ」
「ああ、そのことか。それはな……」
コーディが説明してくれたのは、アビーがお風呂の素晴らしさを語り、今もゴードンが鼻歌まじりにお風呂に浸かっているのを見て、カーペンさん達も興味を持ったらしい。それで、お風呂場の建設を手伝う代わりに、このお風呂を体験させて欲しいということになったらしい。
「え~じゃあ私達は入れないの?」
「なんだ? 入るつもりだったのか? こんな板っきれ一枚なのに裸になれるのか?」
「それを言われると……」
「まあ、そういう訳だからちゃんとしたお風呂になるまでちょっと待つんだな」
「え~そんなぁ~」
ジョディとジュディはガッカリして、家に帰ろうとしたところで気持ちよさそうな顔をしたゴードンが衝立を外して出てくる。
「あ~サッパリした。コー爺、なかなか気持ちよかったぞ。ん? ジョディ達はどうしたんだ? それにこの列は?」
「あ~それは後で説明するから。ドン爺はジュディ達にお風呂の良さを説明してやれ。じゃな」
コーディは衝立の向こうに消えると、お湯の温度を確かめると給湯管からお湯を追加してから、衝立を戻す。
ほくほくした様子のゴードンと残念そうなジョディとジュディと一緒に家の中へと入る。
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