第18話 効能が凄いのよ
お風呂騒動が終わったのは日が暮れてしばらくしてからだった。
遅くはなったが、どうしてもお風呂を体験したかったソニアは小さな灯りを頼りにお風呂に向かうとそこには気持ちよさそうに湯舟に浸かっているジョディがいた。
ガックリして引き返そうとしたが、詰めれば入れるとジョディに言われ、少し逡巡するがこれ以上は待てないと、ジョディにお礼を言って窮屈そうに湯舟に身を沈める。
「ふぅ~」
「ふふふ」
思わず声が出てしまうソニアにジョディが笑みを零す。
「何? そんなにおかしい?」
「あ、ごめんね。私もね、お湯に浸かった時に『あ~』って声が出ちゃったのよ」
「不思議だけど、思わず出るわよね」
「出るわね」
「「ふふふ」」
そんな仲良くお湯に浸かる二人の声を衝立の側で羨ましそうに聞いているジュディだった。
「もう少し早く来てれば……」
「ジュディ、もう遅いよ。今日は諦めなよ」
「マーク……」
「夜が無理なら、カーペンさん達が来る前の朝早くにでも入ればいいさ」
「それもそうね。じゃあ、マークも一緒にね」
「俺もか……そうだな、なら早く寝ないとな」
「そうね、ウフフ」
「おはよう!」
「「「おはよう! アビー」」」
朝になり、アビーが目を覚まし、家族がある待っている食堂に向かうと妙に皆の顔が艶々していることに気付く。特に両親のジュディとマークは人一倍艶々している。
「なんか、皆の感じが違う……気がする」
「おや、アビー気付いたのかい?」
「俺達は分からなかったんだがな」
「でも、ドン爺達も違うよ」
「そうか?」
「俺も違って見えるのか?」
「うん。二人もなんだか昨日より元気そう!」
「そうね、私達もお風呂に入ってからなんだか肌つやがいいのよ」
「そうね、それは私も感じたわ」
ソニアの言葉にジョディも同意する。
「それで、二人は朝早くから何をしていたのかしら?」
「そうね、私もそれは気になったわ」
「「……」」
ソニアとジョディからの質問に固まってしまうジュディとマークの二人だったが、ジュディがいきなり我慢出来ないといった感じで少し大きめの声で話し出す。
「だって、夜に入ろうとしたら、お母さん達が入っていたから入れなかったんだもん。だから、朝早くにカーペンさん達が来る前に入るしかないじゃない!」
「ジュディ、落ち着いて」
「あら、それでマークと一緒に入ったのね」
「へ~マークもね」
「でも、二人で入るには狭いでしょ」
「そうよね。私とソニアでも狭かったのに」
「「……」」
また、黙り込んでしまうジュディとマークを尻目にアビーがドン爺達にお願いする。
「ねえ、お風呂は一つだけなの?」
「ん? どういう意味だ?」
「一つでいいだろ?」
「え~でも、僕も大きくなったら、お父さんとは入りたくないかな~」
「……アビー、俺まだ一緒に入ってないんだけど? もう、ダメなのか……」
アビーが大きくなったら、お父さんであるマークと一緒には入らないというと、マークの顔が段々と曇っていく。
「もう、お父さん。僕が大きくなったらって言ってるでしょ!」
「でも……」
「マーク、まだ先のことよ。今から、そんな心配してどうするのよ。ほら、そんなことはいいから、早くご飯食べてよ」
「ジュディ……」
話が妙な途切れ方をしてしまったが、朝食をとりながらドン爺がアビーに確認する。
「それでアビーは何が足りないと思うんだ?」
「そうだな。俺もソレを聞きたい」
「あのね……」
アビーの望みは基本を男湯、女湯と脱衣所から分けるのは当然として家族風呂があってもいいんじゃないのかということだった。
「なるほどな。じゃあ、男女で一つずつ、それにワシら家族単位に三つあればいいということか」
「うん。そう! ダメ?」
「いや、お湯は大量にあるし、場所もあるからな。ダメと言う訳ではないが、必要か?」
「あのね、カーペンさん達はもうお風呂を知ってしまったでしょ。だからね」
「ああ、そういうことか」
コー爺はアビーの言いたいことに思い当たり手をポンと打つ。
「でも、それは考えすぎじゃないのか?」
「話がみえないぞ、コー爺」
「分からないか。あのな、アビーが思っているのはカーペン達はここの作業が終わってもここの風呂に入りに来るんじゃないかということだ」
「まさか……ないよな?」
「い~や、あるわね」
「そうね。私達の肌つやもそうだけど、あなた達も疲れが取れたでしょ?」
「「あ!」」
「分かったみたいね。あの小っちゃなお風呂でも十分な効能だもの。きっと来るわよ」
「確かに。ソニアの言う通りね。それに村に噂が広がれば……」
「考えたくはないけど、アビーの提案は採用した方がよさそうね」
「ちょっと、設計し直すか」
「そうだな。家族風呂以外は大きく広くしといた方が良さそうだな」
「カーペンも風呂を優先して作るって言ってたしな」
「やった! 楽しみ!」
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