第11話 下りられないのよ

 アビー、ゴードン、コーディ、カーペンの四人でブランコに揺られている内に夕暮れになり、帰って来たマークがその光景に驚く。


「ただいま……って、親父達何してるの? カーペンさんまで……」

「お帰り! お父さん」

「ただいま、アビー。それでこれはどうしたの?」

「これ?」

「ああ、これだ」

 マークはそう言って、二人の祖父とカーペンさんが揺られているブランコを指差す。

「これね、ブランコっていうの! お爺ちゃん達に作ってもらったんだ」

「四つもか?」

「ううん。僕が作ってもらったのは、あの一つだよ」

「じゃあ、なんで?」

 アビーは一つだけ作ってもらったというが、今のマークの目の前には四つのブランコがある。


「それは、ワシから話そう」

「親父……」

 マークの疑問にゴードンがブランコから下りてマークの前に立つ。


「アビーの言うようにワシとコーディの二人でアビーのブランコを作ったんじゃ」

「なら、それだけで十分だろう。なんで三つも?」

「ああ、そのな。アビーが楽しそうだったからワシたちも乗りたくなった。でも、せっかく楽しんでいるアビーをどかして乗るのは祖父としては避けたい。なら、作ればいいってことで、ワシ達はそれぞれで作った。カーペンは知らん」

「ああ、なるほどね。作りもそれほど難しくはなさそうだし……」

 マークはそう言うとゴードンが乗っていたブランコの座板に座ると、ブランコをこぎ出す。

「確かに……これは……楽しい……」

「お父さん、楽しい?」

「ああ、楽しいな」


 アビーとマークは並んでブランコをこいでいると、家の玄関が開き、ジュディが出てくる。

「アビー、そろそろ……ってマーク。帰っていたの?」

「ああ、ただいまジュディ」

「おかえりなさい……って、そうじゃないでしょ。なにこれ? なんで四つもあるのよ。アビー?」

「違うよ。僕が作ってもらったのはこれ、一つだけだから!」

「じゃあ、なんで四つもあるのよ!」

「まあまあ、ジュディ。お前もちょっと乗ってみれば分かるから。ほら」

「お父さんまで」

 父であるコーディに勧められるまま、ジュディはマークの横のブランコの座板に腰を下ろす。


「でも、これはどうやるの?」

「それは、こうするの。いい? 見ててね」

 アビーがジュディにこぎ方を説明すると、ジュディもそれを見てこいでみる。

「確か、こうだったわね……うわっ……へぇ。これは、なかなかね」

 ジュディもブランコの乗り心地に負けたようで、アビー達を迎えに来たことも忘れてこいでいる。

 カーペンだけはずっと気持ちよさそうにこいでいる。


 やがて、アビーを呼びに行ったはずのジュディが帰ってこないことに気付いたジョディ達が家の外に出ると、親子三人で並んでブランコをこいでいる姿が目に入り、それを黙って見ていたコーディに事情を聞き、納得は出来たがこのまま庭でいつまでも遊んでいるつもりかと、アビー達親子を叱りつけ、家に入れる。

 そして、ずっと揺られていたカーペンもそっとブランコから下りると、自分が作ったブランコを解体し、荷馬車に乗せると家に帰るのだった。


 次の日、三つになったブランコを見てアビーが騒ぐが、すぐにカーペンが持ち帰ったことを理解したゴードン達に言い聞かされ納得するアビーだった。


 そして、アビーはいつものように山の中へと遊びに行き、ゴードン達も作業場へと向かうとジュディ、ジョディ、ソニアは家から出るとブランコの前に立つ。


「それでジュディ。これはどうやって遊ぶ物なの?」

「じゃあ、私の真似をしてね。いい?」

「「分かったわ」」


 その後はアビーが帰って来るまで、ずっとブランコに乗り続けていた三人だった。

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