第4話 使えたみたいよ

『魔法に興味があるの?』

「あぃ~」

 アビーはポポが操る魔法に興味を持ち、ポポに『興味があるの』と聞かれ、元気よく返事する。


 そして、ポポは精霊魔法だから人が使うことは出来ないだろうと揶揄い半分でアビーに魔法を教えてみることにした。

『じゃあ、いい? 私が言う通りにしてみてね』

「あぃ!」

『なんか調子狂うわね。まあ、いいわ。まずは周りから魔力を取り込んで指先に集めるのよ。ほら、こんな風にね』

 そう言うとポポは指先に光る何かをアビーに見せる。アビーはポポの指先に集まる何かを集中してジッと見るとやがて、感心したように小さな手で拍手する。

「おぉ~」

『ふふふ、ありがとう。でもね、これは私じゃなくて、あなたがこれから覚えることなの。分かる?』

「あぃ!」

『そう。じゃあやってみましょうか』

「あぃ! あぅぅぅ~……うっうわゎぁぁぁ~ん」

『え? どうしたの? なんで急に泣くのよ! あ、この臭いは……』

『あ~もう、ポポが気張らせるから出ちゃったのよ。ほら、この子のお母さんを呼んであげないと』

『そうね。手伝うわ』

 ピピとププは風魔法でアビーの声を風に乗せ、ジュディに届くように願う。


「あらら、随分と大きい泣き声ね。オムツかしら? あ……これはヤバいわね。はい、キレイにしましょうね」

「あぶぅ」


 ジュディにオムツを交換してもらいキレイになり、機嫌が戻ったアビーにポポが話し掛ける。

『もう、何も出るまで踏ん張ることないじゃない。でも、出す物出したから、もう平気でしょ。さ、続きをやってみましょ』

「あぃ!」

『返事はいいのよね。返事は……』

「あぶ……」


 アビーはポポの指導により、最初こそお漏らしをしてしまったが、日が暮れる前にはなんとか及第点をもらえることが出来た。

『今日はここまでね』

「あぃ」

『でも、アビー。アビーでいいのよね?』

「あぃ!」

 ポポから名前を呼ばれたアビーは元気に返事をする。

『うん。分かったわ。それでね、魔法の特訓は一人でしちゃダメよ。いい? 絶対にだからね、フリじゃないからね。分かったわね?』

「あぃ!」

『本当に?』

「あぃ!」

『もしかして、寝ないで頑張ろうとか思っている?』

「あぃ! あ……」

 ポポに隠れて一人で魔法の特訓をしようとしていたことがバレてしまったアビーはしまったという顔になる。

『やっぱり。いい? もし一人で魔法の特訓とかして、魔法が暴走したらとんでもないことになるんだからね。それは分かる?』

「あぶ?」

『まあ、想像出来ないわよね』

「あぃ~」

『じゃあ、お父さん達が吹き飛ぶと言ったら理解出来る?』

「あ……」

『分かったみたいね。そういう訳だから。ちゃんと守ってよ。いい?』

「あぃ!」

 魔法の特訓を密かにしようと思っていたアビーだったが、魔法が暴走した場合にどうなるかとポポに説明されると、とてもじゃないが特訓しようという気にはなれず、アビーもようやく諦める。

『じゃあ、また明日ね。バイバイ』

『『バイバイ!』』

 そのまま、壁をすり抜け森の方へ帰っていく精霊三人をアビーは見送る。


 数日経ち、アビーはポポの指導の下、魔力を指先に集めることに成功する。

『『『出来ちゃった……』』』

「あぃ?」

『どうするのよ、ポポ。出来ちゃったじゃないの!』

『どうしよう? ねえ、どうしたらいい?』

『もう、出来ちゃったんだから、しょうがないじゃない。こうなったら、ちゃんと長老に訳を話して手伝ってもらうしかないわよ』

 ププがポポを責める様に言うと、言われたポポもどうしていいか分からなくなる。そして、それに対してピピが長老に正直に言うしかないねと突き放す。


『どうしても言わないとダメかな?』

『『ダメでしょ!』』

『分かったわよ。もう、裏切り者!』

『勝手に教えたのはポポでしょ。変なこと言わないでよ』

『そうよ。私は面白がって見てただけだし』

『ほら、裏切り者じゃない!』

『いいから、ポポは長老への言い訳をちゃんと考えなさいよ』

『分かったわよ!』


 アビーは三人の精霊が焦っている理由が分からず、ただ話を聞いていただけだが、どうもアビーが考えている以上に大事になりそうなことだけは分かる。

「あぶぅ~」

『ほら、アビーもため息ついてるわよ。頑張ってね、ポポ』

『う~私だけのせいなの?』

『もう、往生際が悪いわね。大丈夫よ。私達も一緒に行ってあげるから』

『なら、一緒に怒られてくれるの?』

『残念ながら、それはポポ一人よ。ごめんね』

『そうね。私達がして上げられるのはポポの説明を手伝うことぐらいだわね』

『……』

 ポポはアビーを一瞥するとアビーはこちらの様子を窺ってはいるが、何を焦っているのかは分かっているとは思えない。

 そんなアビーの様子が少しだけ憎らしく思えたポポはアビーの頬を軽く抓る。

「あぶ?」

『もう、あなたが精霊魔法を使えることなんてないハズなのにどういうことなのよ。まあ、いいわ。これから、長老に会ってちょっと怒られてくるわ。いい? あなたのせいで怒られるんだからね。分かってる?』

「あぃ!」

『まったく、分かってないわね』

『ポポ、八つ当たりしない。往生際が悪いわよ』

『そうよ。怒られるなんてすぐよ。すぐ!』

『本当にそうかな~』

 ピピはポポに対し、長老に怒られるとしてもすぐに終わると気休めにもならないことを言うが、実際にはそんなに軽くなかったことがアビーにも分かった。

 何故かと言えば、翌朝現れた三人の精霊が揃ってお尻を摩りながら現れたのだから。

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