destroyed days
むせ返るような匂いで目が覚める。
全身に風穴が空いていた。
「う……、なんだ……?」何か重いものが乗っている。温かい。手で触れるとぴちゃり、と音を立てた。
「あ……ひでとし……」姉さんの声がする。
まさか。急激に意識がはっきりする。
「姉さん……?」
そうじゃないことを願いながら呼びかける。
「うん……おねえちゃんだよ……」
上に乗ったものがずり落ちる。
ぽつぽつと降り出した雨の中、恐る恐るそっちを見る。
腹と腕に穴が空き、全身を赤く染めた姉さんが、そこにいた。
「そんな……、なんで!」
鼓動が弱くなっていくのを感じる。聞きたくない。
「なんでって……おねえちゃんだもん……あたりまえだよ……」
「でも……、だって……。」
僕の傷はもう治る、姉さんは……。
「もう……そんなかおして……」
震える手で僕の頬を撫でる。分かってしまう。
姉さんの音が、匂いが、掻き消えて行く。
「ふふ……よかった……げんきそう……」
滲んで見える姉さんが、力なく微笑んだ。
「僕は……、ぼくはこんなバケモノなんだよ!?なのに……」雨音が響く。
「かんけいないよ……かぞくだもん……」
僕に触れた手に微かに力が籠る。
「そんなに無理しないで!そうだ、病院に……」
「もう…いいよ……それより……ごめんね……」
ごめんね。
言葉は、それが持つ印象と裏腹に、ただ、重かった。
「……じゃあ帰ろう?このままじゃ風邪ひいちゃうよ?」何を言っているんだろう。
「そうだね……かえ……ろっか…………」
微かだった音が、止まった。
「そんな……姉さん?ねえさああああん!!!」
僕の中で何かが壊れた。
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