a little avenger beast
気が付くと姉さんはいなかった。
ドス黒い感情のまま、真っ暗な街を駆ける。
己の姿すら見えない暗闇の中、唯一、ぼんやりと映るものがあった。
鼓動すら聞こえない静寂の中、唯一、ただ耳障りな音があった。
血すら匂わない大気の中、唯一、鼻につく臭いがあった。
ーーー何も感じない世界で、あいつだけが確かに存在した。
心が、身体が、本能が叫んだ。……殺せ、と。
僕は喜んでその衝動に身を任せた。そうだ、殺せ。
「チッ、なんでまだピンピンしてんだよ……、イラつくぜ……!」何かを言われた気がした。
意に介さず疾駆する。
昏く、甘く、苦い感情を右腕に乗せ、身体ごと叩き付ける。
「ハッ、芸が無えなあ!秀利クンよお!『テーロス』!!」
視界が、歪む。肉を裂く感触。悲鳴が上がった。
「お前なんかがその名を呼ぶな。」
悲鳴の方向へ再度爪を振るう。固いものに触れた。
「ーーがあっ!なんだこいつ!?さっきまでとはまるで……ぐうっ……!」五月蠅い。
「姉さんの仇だ。」呟き、蹴る。折った。
「クソックソックソッ!!!『アーチ』ィィィ!!!」大気を焦がし、穿つ。
「絶望しろ。」
肩のそれを掴み、投げ返す。靄が揺らぐ。
「はーっ、はーっ、クソが……、クソがあああ!」気配が消える。
「ぶっ壊してやる……、ぶっ殺してやる……。ガンマァァァ・バーストオォオォオオォォオ!!!!!」上だ。地面を蹴る。
「逃がさない。」光の奔流に吸い込まれる。届かない。
「ハ……、ハハハハハ!!これで奴も……」
巻き上げられた瓦礫を足場にさらに上へ、跳ぶ。
「死ぬのはそっちだ。」怨み、憎しみ、怒り、悲しみ。すれ違いざまに叩きこむ。
最後に強く臭い。輝く。ぐちゃり、と二度鳴った。
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