gentle liar

それからしばらく後、学校から帰る途中で姉さんのバイト先に行くことにした。

「あれ、秀利?どしたの。」

不思議そうに飲み物を準備する姉さん。

「鍵忘れちゃって……。」席に座って飲みながら話す。

「わかった、ちょっと待っててね?」

そう言うとカウンターの奥に引っ込んでいった。

どうするんだろう……、無理してないかな。

少し心配になる。

「お待たせ!じゃあ帰ろっか。」

しばらく待っていると戻ってきた姉さんが言った。

「えっ、いいの?バイトまだあるんじゃ……」

「いいのいいの、早引きさせて貰ってきたから!」

店から出ながら言う。

「そう?じゃあいいけど……。」

エレベーターを待ち、話す。

「そうそう、気にしないでいいよー?」

そのままエレベーターに乗り、建物から出る。

「……焦げ臭くない?」

顔をしかめながら辺りを見回す。

「えっ?何も臭わないけど……」

怪訝そうにする姉さん。……遠くで火事だ。

「うーん……、気のせいだったのかな……?」

……また、嘘をつく。

「よくあるよねー、昔から。」微笑みながら言う。

そう、よくあること。

普通の人が気付かないことにも気づいてしまう。

そして不用意な発言から嘘を重ねていく。

こんなこと、本当はしたくないのに……。

でも、これしかないんだ、姉さんを巻き込まないためには……。だから……。

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