いいかげん異世界転生するの、やめてもらってもいいですか? ……とばっちりで異世界転生に失敗した俺は、魔王の部下に成り下がり異世界転生を撲滅します。(仮)
第50話 見知らぬ場所では、ほんの些細な共通点を見つけただけで異常に仲良くなれるのって不思議だよね。
第50話 見知らぬ場所では、ほんの些細な共通点を見つけただけで異常に仲良くなれるのって不思議だよね。
「今、何て言った……?」
「ですから、お互いの好きなアニメの話でもと……」
「え……。この世界……いや、エクレールって、アニメ放送してんの?」
「……してませんよ。そもそもこのエルダーアースという世界にはテレビすら存在していません。僕が言っているのは、元いた世界で見ていたアニメの話です」
こいつ……やっぱり、そういうことなのか。
「テーレ。おまえ、まさか……転生者か?」
「そうですよ。あなたも、そうですよね?」
こいつ……。俺が転生者だと確信をもって、この話題を振ってきたのか。実際には転生者かといわれたら微妙な状況だが、日本からこの世界に来ている点は、転生者と相違ない。
それにしても、どうしてわかったんだ……?
「僕が真人さんを異世界転生者だと見抜いた理由が気になっているようですね」
「ああ、そうだな……よかったら教えてくれないか?」
後学のためにもぜひ知りたいところだ。
俺は今後、マキナと一緒に異世界転生者を見つけ出してどうにかしていかなきゃいけないわけだし、もし何か異世界転生者を見抜くコツがあるのなら知りたい。
「初めて真人さんが名乗った時、日本人っぽい名前だったので」
「……ああ、なるほど」
言われてみれば、確かにその通りだった。
今更だけど、テーレに初めて会った時に俺が
「それにさっき僕はすぐには寝ていなかったので、あなたが僕の寝姿を見てアニメとかでよく見かける、と言っていたのが聞こえてしまいまして。それで確信しました」
……見抜くコツもクソもない。
すべてにおいて、俺が単にうかつだっただけじゃねーか。
「なるほど、それは気づくよな。……まあ、俺の場合は転生じゃなくて転移だけど」
「ということは、その姿は日本にいたときのままということですか?」
「そうなるな。ちなみにこの世界に来たのは数日前だ」
「なるほど……」
テーレは顎に手をやり、何かを考えるような仕草をする。
真剣な顔をしているところ悪いが、この話題は掘り下げたくないな。
マキナが魔王であることを隠している以上、転移などに関わる話をしてしまうとそのうちボロが出てしまいそうなので、いったん話を戻すことにする。
「……それで、アニメの話をするんだっけ?」
どうせ日本人であることがばれてしまったんだし、この際、遠慮せずアニメトークでもしてやろうじゃないか。
「真人さんは数日前に転移したといいましたね。おそらく転生した僕がアニメを見ていた頃とはだいぶ時間差があるので、話が合わない気がします。それに実はこんな話題を振っておいてなんですが、アニメは少ししか見たことないんです」
なるほど。見た感じ俺と同年代っぽいから、少なくともテーレが転生してから15、6年は経っているというわけか。
「ほーん。ちなみに見たことある作品って、どんなの?」
「……科学と魔術が交錯するお話ですが、知りませんよね?」
「全話見たぞ。原作のラノベも読んだ。面白いよな」
「え……?」
「主人公の決め台詞。あれを言ってから強敵を倒す展開は、胸が熱くなったね」
「真人さん……!!」
テーレの表情が、仮面越しでもウキウキしているのが分かるくらいに弾んでいた。
それから、俺とテーレは、共通の話題でしばし、大いに盛り上がった。
「まさかここまで話せるなんて……今世はもちろんのこと、前世でもこれほど楽しく話せる人はいませんでした」
「そうなのか? テーレがもし俺と同じクラスだったら、絶対に友達になって夜通し語り明かしてるけどな」
「……それは、なんというか、楽しそうですね」
「間違いなく楽しいさ。何なら今からでも、夜が明けるまで話すか? 俺は一向にかまわないけど」
「……いえ。これ以上は
そういえば、テーレはこの後また睡眠を取るんだった。このまま朝になるまでアニメの話をするわけにもいかないよな。
「また、話したくなったらいつでも言ってくれ」
「はい」
テーレは名残惜しそうに頷く。それから、まじめな顔つきになると、実は他にもお聞きしておきたいことがありまして、と話をつづけた。
「……真人さんは、異世界転移するにあたって、女神様からどんなスキルをもらったのですか?」
やっぱり気になるよな。ちなみに俺もテーレがどんなスキルをもらったのか気になる。
でも、俺の場合は特殊な経緯で、女神からスキルはもらっていないんだよな。その代りマキナから異様に禍々しい色をした指輪をもらったおかげで魔法は使い放題だけど。
このあたりの説明って、マキナが魔王であることを隠している以上、正直に話すわけにもいかないよな。……仕方ない。適当にごまかすか。
「……俺はさ、身体強化のスキルしかもらえなかったんだ」
ことさら絶望的な表情で、さも残念そうに自分のスキル(嘘)を告げた。
「し、身体強化スキルですか。……まあ、その、使い勝手はいいスキルですよね」
テーレの反応がとても渋い。
やはり身体強化スキルは、以前マキナが言っていたようにたいしたことないスキルというのが共通認識なのだろう。使いこなしたうえでめちゃくちゃ強い源が異常なだけで、これが普通の評価なんだ。テーレのフォローにも憐みを感じさせる声音が多分に含まれてるように感じるし。
「……テーレの方はどうなんだ?」
「僕は、女神様の加護によって、あらゆる技能の習得が早まるスキルです。昼間お見せした剣技も、このスキルのおかげで身に着けることが出来たんですよ」
「へぇー、いいスキルだな」
「あ……。なんか、すみません……」
テーレが申しわけなさそうに謝ってきた。目の前にいる俺がゴミみたいなスキルしか貰っていないと思うと話しづらいよな。ごめんよ。
「あ、安心してください。水龍退治は僕が何とかしますので!」
「そうだな、任せるよ」
あらゆる技能の習得を早めるということは、きっと魔法とか他にも常人離れした実力の技能を多く持っているのだろう。
やはりテーレは、優秀だ。
だけど、優秀な異世界転生者だったというのは少し問題でもある。
そこで眠りこけてるこの世界の魔王たるマキナは、異世界転生者を蛇蝎のごとく嫌っているからな……。
「あのさ、テーレ。おまえが異世界転生者だってことは、マキナ様には秘密にしておいてもらっていいか?」
「別に構いませんが、何か言ってはまずい事情でもあるのですか?」
「まあ、ちょっとな……」
わざと言いにくそうに口ごもると、テーレは俺のそんな様子を見て、話したくない事情なのだろうと勝手に気をまわしてくれたようで、頷いた。
「……理由はわかりませんが、真人さんの言う通りにします」
「助かる」
「そのかわり、あと一つお聞きしてもいいですか?」
「なんだ?」
「真人さんとマキナさんって、実は特別な関係だったりしますか?」
と、特別な関係とは……??
「それは、具体的にはどういう関係を想定してんの?」
「もちろん、恋人同士だったりとか、ではないでしょうかと」
「こ、恋人……!」
俺とマキナが、恋人……!
……。
確かにマキナは見た目については、俺の好みにドストライクな姿になってもらっているから当然好きだ。
でも中身は魔王だし。
それに地球を破壊しかねない危険な存在でもある。
そもそもマキナは俺のことを最初の内は、ペットの餌にしようとしてたくらいだ。
でも、役に立つところを見せて正式に部下になってからは、そういえばあまりひどい扱いは受けていないか。
源と戦った時は……なぜか、部下としてすごく心配してくれたし。
始めのうちは、命乞いから仕方なく部下になったわけだけど、最近は俺のことも信頼してくれていて、いつの間にか、一緒にいるのも悪くない気がしてきている。
それに、安心しきって添い寝してくるマキナは正直言って可愛いし、無防備な寝顔も可愛い。
そういえばさっきゴブリンに囲まれたときに、裾をちょんちょん引っ張られたときの、マキナの上目遣いも可愛かったな。
……。
……あれ、ちょっと待て。
俺、いつの間にかマキナの事、魔王としてではなく、可愛い女の子として見てないか……?
「真人さん? どうしましたか?」
「あ、いや……」
「やっぱりお二人はお付き合いを――」
「――いや、そんなんじゃないから!」
俺は慌てて否定した。
待て待て、冷静になれ。
マキナは魔王だ。女の子じゃない。それに下手したら地球を滅ぼしかねない超常の存在なんだ。
目を離すと地球を滅ぼされかねないから、俺が側にいて、うまくコントロールしてる。……それだけなんだ。
「お付き合いしているわけじゃ、ないんですか?」
「してないし、そういう関係じゃない。……一緒にいるのも、やむを得ずだから」
「そうですか。……それは、よかったです」
「え……?」
テーレは、まじめな表情をしながら、眠るマキナに視線を向けていた。
「なにが、よかったんだ?」
思わずテーレに問いかけると、マキナをじっと見つめたまま、口元に笑みを浮かべた。
「――もし真人さんとマキナさんがいい仲だとしたら、僕が彼女を狙うのは申し訳ないですからね」
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【あとがき】
第50話を読んでいただき、ありがとうございます♪
テーレが真人とマキナとパーティを組んできた理由は、まさかのマキナに興味があったから……?
次話は3月28日か29日に投稿します。
引き続き、お読みいただけると嬉しいです♪
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