いいかげん異世界転生するの、やめてもらってもいいですか? ……とばっちりで異世界転生に失敗した俺は、魔王の部下に成り下がり異世界転生を撲滅します。(仮)
第27話 初めて会った人に名前を聞きそびれると、完全に名前聞くタイミングを失って、なんなら名前知らないまま仲良くなるまである
第27話 初めて会った人に名前を聞きそびれると、完全に名前聞くタイミングを失って、なんなら名前知らないまま仲良くなるまである
ひとまず魔王と女神が和解したところで、エクレール王国へと向かうことになる。当然魔王の転移魔法によって向かうことにはなるのだが、一つ問題があった。
「王都エレクトランは都市を囲うように城壁があり、そこに沿うように都市全体を覆う探知魔法が展開されているんじゃ。ゆえに魔法で一気に転移すれば、エクレール王国の魔導士たちに感づかれるかもしれん」
「じゃあ、近くに転移して、王都まで歩いていく感じですか?」
「そうなるの」
魔王がこればっかりは仕方がないと、首を振る。そんな魔王の様子を見て女神は鼻で笑った。
「……なんじゃ女神。何がおかしい」
「なぜ、天界を経由していかないのです? 別の世界からの転移であれば、探知魔法には引っかからないというのに」
「あ……なるほど。そういえば、そうであったな」
「ここは、私に任せていただければ――」
女神が何か言いかけたが、最後まで聞かずに魔王が指パッチンをする。そして、現れるお馴染みの転移ゲート。
「……また、勝手に天界への道を繋げましたね。いったい、どうやって座標を特定しているんですか」
「それは秘密じゃ」
本来下界の者は、天界へ転移魔法を使うことが出来ないらしい。そもそも下界からでは転移魔法を発動するために必要な、
「……まあ、今はいいでしょう。ではお先に」
女神がまず転移ゲートをくぐり、そのあとに
改めてやってきた女神の住まう天界は、視界を埋め尽くすほどの白にまみれた空間だった。踏みしめる大地も、見上げる空も、何もかもが白。こんなところにずっといたら気が狂いそうになる。……だから女神は地球に寿司を食いに来たりしてたのだろうか。
「何にもない。真っ白だし……ここは、
玲奈が残念そうにつぶやく。まあ、この殺風景な天界をネットの海にアップロードしたところで、いいねは全くつかないだろう。
転移ゲートから最後に魔王が出てきて、合流する。
「さて、では改めて、エクレール王国の王都エレクトランへと向かうが、よいな?」
「あ、その前に一つだけ話しておきたいことがあるんで、ちょっと待ってもらってもいいですか?」
「む。なんじゃマサト?」
魔王は再び指パッチンをしようとした姿勢のまま、振り返る。
「玲奈にも何か身を守れるようなモノ、もらえませんか?」
異世界の地に行くのに、さすがにただの一般人のままというのも、少し心配だ。傍には魔王や俺がいるとはいえ、常に守り続けられるかといわれたら、自信ないし。
「そうじゃのう……。じゃあ、レナにはこれをやろう」
魔王は、俺に指輪を与えたときと同じように、右手に禍々しいオーラを凝縮させ、掌に一つのブレスレットを出現させた。それは、赤黒く染まった趣味の悪そうな鉄製ブレスレットだった。
「レナよ。これをやるゆえ、身に着けておくがよい」
「え……マキちゃん、これ何?」
「魔法の腕輪じゃ。これを身につけておる限り、あらゆる攻撃を自動で防いでくれるし、死んでも一度までなら生き返ることが出来る」
「へえ、すごい! マキちゃんからの贈り物だし、大事にするね!」
玲奈は喜びながら、早速ブレスレットを左腕に通した。
てか、俺もそっちの方が欲しかった……。俺がもらったやつって、自分で魔法を発動しなきゃいけないから、基本的に戦う時はしょっちゅうトラウマ級のダメージを負わされてから回復するスタイルになるし、死んでも自分で生き返れないし。……いや待てよ。俺の指輪も、常に攻撃を跳ね返す魔法を発動しておけば同じ効果が得られるのか……?
今度、時間があるときに試してみよう。
ひとまず事前に確認&しておきたかったことは終わった。俺としてはもうエクレール王国に向かってもよかったのだが、ここで女神が口を開く。
「待ってください! せ、せっかく天界に来たのですから、私からも玲奈さんに一つ、スキルを授けましょう!」
女神が慌てたように、転移魔法を発動しようとした魔王を止める。
「いや、儂がやった腕輪さえあれば、おまえのくだらないスキルなぞ、いらんじゃろ」
「そんなことはありません! ……ていうか、私も玲奈さんに何か差し上げないと、好感度のバランスが……」
「ん?」
「……いえ、私のスキルも絶対に役に立つはずです。そもそも、私が玲奈さんにあげると言っているのです。玲奈さんがいらないというならまだしも、魔王に勝手に断られる
「スキル……?」
玲奈が首をかしげると、女神は玲奈に補足で説明を始める。
「スキルというのは、魔法とはまた違う特殊能力のことです。例えば源之助さんは身体強化のスキルを持っているので、それを使えば超人的な力を得ることが出来ます」
「え、そうなの? 源君、何か見せて!」
「え……何かと言っても……」
急に話を振られて困惑する源。こういうアドリブっぽい状況は苦手なのを知っているので、俺は助け舟を出してやる。
「とりあえず、身体強化して垂直に飛んでみりゃいいんじゃないか? たぶん、人間離れした高さまで飛べるだろ?」
「なるほど」
源は頷くと、思い切り身体を屈め、身体強化を発動しながら蓄えた力を一気に解き放つ。
その瞬間、すさまじい衝撃波が発生し、まるでロケットのように、源は一瞬で空高く飛びあがっていった。ちなみに俺だけ衝撃波をまともに喰らって、横方向に吹き飛ばされたのだが、玲奈は魔法の腕輪で、魔王と女神は、魔法によってちゃんと衝撃波を防いでいた。
……やはりオートで防御できるように何か考えないと、こんなのにいちいち自分で反応して、魔法で対処できるとは思えない。
そして、数十秒ほどで、源が地上に戻ってくる。
「源君すごい!」
「ま、まあ、女神様にいただいたスキルと俺の筋肉があれば、こんなもんだよ」
「へぇ~。スキルもすごいけど、源君、筋肉もすごいもんね~」
感心したように玲奈が源の二の腕の筋肉をツンツンしながら、かたーいとか言ってる。源の奴もまんざらでもない様子で、非常に緩んだ表情を浮かべていた。
「今ので分かったと思いますが、私の与えるスキルはとても強力なのです。玲奈さんにもぜひ、何かスキルを差し上げたいのですが……どんなスキルが欲しいなどの希望はありますか?」
「うーん。そういわれても、私は戦いとかできないから、そういう系のスキルはあってもなあ……」
「別に戦いに使うスキルにこだわる必要はありませんよ? 旅に役立つスキルとかでもいいですし、何かないですか?」
「あ、それなら欲しい能力ある、かも」
「どんな能力ですか? できる限り希望に添えるスキルを差し上げますよ?」
「えーと、ちょっとみんなの前でいうのは恥ずかしいから、耳貸してもらってもいいかな?」
玲奈は女神の元まで小走りで近づくと、ひそひそ話をするように、女神に耳元で自分の希望するスキルを伝えているようだった。
「……それでしたら、どちらも希望に添えそうなので、スキルは二つに分けて付与しましょう」
女神が手をかざすと、玲奈の身体が一瞬だけ光に包まれた。おそらく今ので女神は玲奈にスキルを付与したのだろう。
「いったいどんなスキルをもらったんだ?」
「……教えたくない」
「え……なんで?」
「……逆に、なんでお兄ちゃんに教えないといけないわけ?」
俺は気になったので玲奈に直接尋ねてみたが、残念ながら教えてもらえないようだ。ただ、先ほどの口ぶりから戦闘に役立つようなスキルではないのだろう。気にはなるが、どうしても知りたいというほどではないので、いつか、玲奈が話す気になった時にでも聞いてみることにする。
「これで、準備はすべて整った感じかの?」
「そうですね……あ」
「なんじゃ……まだ何かあるのか?」
「そういえば、女神のことを女神と呼ぶのはまずい気が……一応エクレール王国では崇拝されてるって言ってましたし。変に目立つのは避けた方がいいですよね?」
「それもそうじゃな。……女神よ。おまえ、何て名前なんじゃ?」
あ、魔王も女神の名前知らなかったんだ……。
「ふん。あなた方のような下界の者に、私の尊い
「女神様はルーナって名前だ」
名前を秘匿しようとした女神の傍らで、源があっさりと女神の名前をばらした。
「ちょ、源之助さん! 私の
「でも、いい名前だし、隠しとくのはもったいないっすよ」
「い、いい名前って……はぁ、もう、いいです。言ってしまったものは、もう隠しようがないですし……。ですが、気安く呼ぶことは――」
「女神様、名前はルーナって言うんだ! 見た目もカワイイのに名前もカワイイなんて、最強じゃん! 改めてよろしくね、ルーナちゃん」
気安く名前を呼ぶなと言おうとしたところで、先に玲奈に気安く名前を呼ばれてしまい、女神はしぶしぶ名前を呼ばれることを許容したのだった。
「……仕方がないですね。この件が終わるまでは、私の
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【あとがき】
第27話を読んでいただき、ありがとうございます♪
女神様の名前も一応考えていたんですけど、なかなか出す機会がなく、まさかここまで引っ張ることになろうとは……。
次話は1月22日(月)投稿予定です。
引き続き、お読みいただけると嬉しいです♪
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