第16話

 これまでずっと三人から逃げてきたが、愛梨が高校に転校してくるという禁じ手だと声高らかに叫びたいような手を打ってきたため、僕は逃げるのを諦め、久しぶりに自分の家へと帰還していた。


「……何しているの?お前ら」

 

 実に庶民的。

 別に僕の所持金も既に3000万を超えており、かなりの金持ちではあるが、それでも僕の家はどちらかと言うと質素であった。

 高級な家具もなければ、高性能で大きな家電製品もなし。

 人が一人、問題なく生活出来れば十分程度のものしか僕の部屋にはなかったのだ……僕の記憶にある限りでは。


「マジで……ほんと、ナニコレ?」

 

 僕はただただ目の前の光景に困惑することしか出来ない。

 確かに僕の部屋であったここはいつの間にか実に華やかな場所へと変わっていた。既に元々あった僕の家具はなく、代わりに大量の高そうな家具が並べられ、高そうな家電製品が並んでいる。


「……改造した」

 

 いつものようにぴったりと僕の腕にくっついてきた神楽。


「どうかしら?」

 

 それと大胆に変貌した部屋を前にドヤ顔を披露する古海。


「まずテレビは捨てろ、邪魔……後、当たり前のように椅子を四つ用意するな。ここは僕の一人暮らしだ」


「「……?」」 

 

 僕の言葉に二人して揃えて首をかしげる二人。


「その反応……やっぱりお前らグルなの?」


「グルじゃないよ?」


「……二人は、私が殺す」


「ははは、ずいぶんと面白い冗談を言うのね?既に擦り切れた分野に手を出して首が回らなくなりそうなアホが」


「……産業の、国内回帰。今の情勢下で、新しいのなんてアホ」


「今更氷河期世代に手を伸ばして産業を復活させるなんて無理に決まっているじゃない。林業にまで手を出しているんでしょう?既に燃え尽きた栗が好きすぎじゃないかしら?」


「……それを決めるのは、私。そっちの事業こそ……」

 

 なんかすっごく高レベルな言葉の応酬、罵り合いを流れるように開始する二人……喧嘩はしているが、それでもやっぱりグルっぽい。

 まぁ、三人の計画の話は後で愛梨も来た時に聞こう。


「なぁ、聞きたいんだけどさ……お前らも年商億ある?」

 

 僕は二人の口論に割って入り、全然関係ない話を振る。


「あるよ?」


「……ある」

 

「……そうかー」

 

 僕は二人の……僕が一生懸命3000万くらいかき集めているあいだにこの三人は年棒一億の大金持ちに。

 まぁ、僕は働いていないし妥当か。


「皆さん、只今戻りました。たくさんの刺身を買ってまいりました。今日は皆さんで手巻き寿司パーティーといたしましょう」

 

 僕がそんなことを考えていると買い物袋を提げた愛梨が帰ってきたのだった……いや、帰ってきたってのはおかしくないか?

 

 

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