第11話
愛梨が転入してきた僕のクラス。
「和葉は本当にひどいんですよ。釣った魚に何も餌を与えてくれないんです……」
「うん」
「裏でこそこそ動いて私の立場をどんどん悪くして、心に大きな傷を負った小学生の頃の私に寄り添って優しく接して……これ以上ないほどに私の感情を昂らせたところで和葉は私のことを一方的に捨て、逃げるようにして引っ越しちゃったんです」
「何それ、ひどい!」
「人間は変わらないのね」
「……というか、小学生の段階から和葉くんは和葉くんなのね」
「やっぱり人間は顔だけじゃなくて性格も大事ね」
「和葉を貶さないでもらえますか?」
「あっ……まだ普通に好きなんだ」
「当然です……ですから、私はこんなにも苦難しているのです。どれだけ頑張っても振り向いてもらえなくて……」
「可哀想」
「……一方的な恋は辛いよね」
わいのわいと愛梨を中心として騒ぐクラスの女子たち。
「……むにに」
僕は自分に向けられる非難の数々に苦々しく思いながら表情を少しばかり歪める。
自分のクラスが一気にアウェーになったんだけど。
「もうちょい高校でも自分の評判に気を使っておけばよかった」
小、中学生の頃は外見も内面も完璧に見える超人を目指して動いていた……自分の完璧な寄生先を作るために。
だが、高校生ではそれを諦め、お金を稼ぐシステムの構築に心血を注いでおり、それに伴って内面の偽装は少し抑えめ。
クズっぷりを少し見えていたせいで……クラスが一気に敵になってしまった。
「とはいえだけど、僕も言いたいことくらいあるよ?」
そんな中でも僕は声を上げ、クラスにいる全員に聞こえるように声を出す。
「まぁ、僕がクズいことは自覚しているが……それでも小学生の段階で銃刀法に違反するようなしっかりとした刀を持って僕を追いかけまわし、そして。つい二、三日前。腕力で鍵のかかったドアノブを強引に破壊してこじ開け、当たり前のように私も家の一員ですが、何か?と言わんばかりの態度で居座るお前は狂人だよ?どんなクズでも逃げ出すヤバさを持っているのが愛梨やん」
僕がクズなのは理解しているが……それでも僕は捕まえることがないよう細心の注意を払いながら動いている。
だが、愛梨は、というか三人はそんなもの知らぬと言わんばかりに犯罪行為も躊躇なく行う。
銃刀法違反、器物破損、不法侵入。
恐喝、ストーカー、盗聴、盗撮……普通に一発アウトなことを大量に行っている。
ド屑よりも犯罪者の方がヤバいのではないだろうか……?
まったく、僕がたとえ被害者だとしても警察のお世話になりたくないという僕の心理を利用する姑息な方法を使いやがって。
「「「……えっ?」」」
愛梨の味方ムードだったクラスメートは……そんな僕の言葉を聞いて驚愕の声を漏らし、固まるのだった。
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