第9話

 回転寿司屋にやってきた僕と神楽。


「……サーモン」


「ほいよ」

 

 自分の隣にぴったりとつき、小さく寿司のネタをつぶやく神楽の言葉に僕は頷き、レーンを流れているサーモンの皿を取って神楽へと渡す。


「ありがと、大好き」


「おう」


 僕は神楽の言葉を適当に流しながら、自分も寿司を口に放り込んでいく。


「やっぱりお寿司は美味しい」


「……そう、だね」


「高いお寿司もまた良いんだけど、回転寿司も良さがあるよねぇ」


「……うん、うん。回転寿司は、良い」


「だよね」

 

 炙りサーモンチーズだったり、バジルだったり、てんぷらだったり、カルフォルニアロールだったり。

 高級店にはないジャンクなものが非常に魅力的なのだ。

 

 僕と神楽は適当にくだらない雑談を繰り広げながら、回転寿司での時間を過ごす。

 

「むみみ、また和葉と一緒にご飯食べられて嬉しい」


「さよか」


 ……むみみ?

 僕は無表情の神楽の口から飛び出してきたその一言に内心首をかしげる。

 え?なにあれ、笑い、声なのか……?いやいや、にしては無表情だし……何よりむみみ?

 空耳でも聞き間違いでもなく、はっきりと間違いようもなく『むみみ』と口にしたぞ?


「……また、来ようね」


「機会があればね」


 僕がそんなことを考えている間にも時間が過ぎ、手に取った皿の数が十を超えたあたりで僕のお腹が満腹に近づいてくる。


「僕はもういいかな?」


「……ん。私ももういい」

 

 机の上に置いてあったお皿を片付けた僕はそんな感想を漏らし、それに神楽も同意する……って、めっちゃ食うな、神楽。一人で20皿以上食べているやんけ。草。


「んじゃ、そろそろ帰るか」


「……うん、そうしよ」

 

 僕の言葉に神楽は頷き、ゆっくりと神楽が立ち上がる。


「あっ。僕が一先ず会計するから、店出た後にお金頂戴ね?」

 

 それに続いて立ち上がった僕は自分で財布を出しながら畜生発言を口にする。


「……うん」


 そんな僕の言葉に笑顔で頷く神楽……マジで大丈夫か?この女。

 自分で作っておいて言うのもなんだけど、神楽のぶっ飛び具合に僕は少しばかり、いや。かなり心配になってしまった。

 まぁ、だからと言って僕は行動を改めるつもりはないけど。


「ごちそーさま」

 

 僕は財布を手元で回しながら神楽と共に会計の方に向かった。

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