第5話
相川古海。
確か両親が不仲でいつも喧嘩する両親の言葉を聞きながら一人、コンビニ弁当を食べるという生活を送っていた子だったはずだ。
常にギスギスしている家に冷たいコンビニ飯。
僕はいい感じに孤独を抱えていたその少女の心の隙間に入り込み、自分へと依存させて行った記憶がある。
「ふふっ、こうしてまた一緒にお話出来る日を楽しみにしてたわ!」
「……」
こいつの頭はお花畑か何かなのだろうか?
まともに会話なんてしてないだろうが……それを見てお話とか一体何を考えているのか。
「ねぇねぇ、和葉は元気にしていた?……いや、聞かなくても元気だったってのはなんとなくわかるなぁ。和葉はすっごく強いし……私の方はねぇ……」
「……」
随分とうるさくなったなぁ。
僕は何の返答もしていないのに勝手に一人で話して盛り上がる古海を見てそんなことを考える。
小学生の頃はこんなにうるさくなかった……もっと静かだったはずだ。
こんなにも内面は変わっているのに……何で僕への依存心は薄れていないんだろうか?
だいぶ適当にこなした僕の洗脳くらいさっさと解いてほしいのだけど。
「あっ!そういえば喉乾いているんだったよね!今、レモンティー汲んであげるね、ごめんね?気が利かなくて」
勝手に僕の部屋を歩き、勝手にコップを持ってくる古海。
……なんか、病み度が更に進んでいる気がする古海を前にして、 僕は古海の対応に頭を悩ませる。
ここで『お前のことなんて興味無いし、さっさと家に帰れ!』という僕の素直な気持ちを口にすると、なんか暴れられそう。
小学生時代、色々と問題が噴出したあの頃を思い出して僕は口を閉ざす。
「はい、どうぞ」
「おん、ありやと」
僕はレモンティーを汲んでくれた古海へと適当にお礼の言葉を告げ、それを口に含む。
「……」
さて、どうしようか。
古海を受け入れるのはなしだ。
自分の知らない女が一生僕を養うなんて言ってきても信用できない。
僕の寄生先にするのも、未来永続に続く金づるにも出来ないし……であれば古海なんて要らない。
「……んぅ」
僕が古海にどう対処するかで悩んでいると。
「お邪魔します」
玄関の扉が開かれ、古海とはまた違う一人の少女がさも当然のような表情で僕の家へと上がってくる。
「……和葉」
そして、一体いつから居たのか。
僕の斜め後ろには、控えめに僕の服を掴みながら耳元で実に小さく、そしてねっととした声で僕の名を呼んでくれる謎の少女が鎮座していた。
「え?」
不法侵入者が一気に一人から三人へと増加……圧倒的急展開を前にして僕は困惑の声を上げるのだった。
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