第4話

 玲衣を家にまで届けた後。

 電車に乗って数個ほどの駅を通過して自宅へと帰ってきた僕。


「……なんでうちにいるの?」


 そんな僕はさも当たり前のような顔で僕の家にいた女を見て口を開く。


「ふふっ。ちゃんとジュース買ってきましたよ?午前ティーのレモンで良かったよね?……もしかして、小学生の頃から好み変わっちゃった?」


「いや、レモンティーは好きだけど、そんなことよりなんでお前が僕のい……ん?小学生?」

 

 名も知らぬ女がさも当たり前のような顔をして僕の家にいて、嬉々とした表情を浮かべながらレモンティー買ってきたよーという笑顔を向けてくる恐怖光景。

 それを前にする僕はただひたすら困惑していたのだが……彼女の口から出てきた『小学生』という単語を受けて僕は固まる。


「にしてもなんで私のことを置いて行ったの……?戻ったとき和葉がいなくて私寂しかったんだよ?あっ!もしかして私と二人きりにになりたかったから?そうだよね……うん、あの場にはお邪魔虫もいたもんね。うん」


 小学生の頃。

 何もせずともお金を稼げることを目指す今の僕とは違い、他人に養ってもらうことで『働かない』という己が夢を果たそうとしていた頃。


 確か、あの頃の僕は将来自分を養ってくれる人を人工的に作るため、女の子を病ませてから自分に依存させ、女の子をいわゆるヤンデレにすることを目指して行動していた。


 殺してしまいたくなるほどの愛を抱えるヤンデレであれば何があろうとも僕を捨てることなく一生養ってくれると思い、実行したのだが……。

 とりあえずでやってみた女の子三人がまさかの全員成功で全員ヤンデレ堕ち。

 一応金をくれる金づるになったのは良いのだが、三人全員成功しちゃったせいでいつ誰が犯罪を犯してもおかしくないような実にバイオレンスな修羅場が至るところで展開され、なおかつ愛と束縛が激し過ぎて嫌気が刺した僕はヤンデレ娘を捨て、適当な無理難題を吹っ掛けて彼女たちの前から姿を眩ませたのだ。


 既に僕の中では終わった話で、それも昔だったから覚えていなかったが……そうか、まだあの軽はずみな僕の行為は後を引いていたのか。

 ……めんどうな。


「……お前、もしかして古海か?」

 

 なんか訳の分からぬことをほざいていた女……否、僕が小学生の頃にヤンデレ化させた少女の一人。

 相川古海へと僕は声を投げかける。


「うん!そうだよぉ……あっ!そうだよね!久しぶりに会うし、やっぱり名前を告げるのもテンプレだよね!ふふっ。私は相川古海!久しぶりだね!和葉!」


「……」


 テメェは僕の彼女じゃねぇだろうが……金づるもどきぃ。

 自分の前で笑みを浮かべる

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