コミュ障ぼっち、最強剣客として無自覚にバズる〜最弱魔物を真っ二つにしただけなのにバズってしまいました。え、実はS級モンスター? いやいやご冗談を〜
第41話 女剣客、祖父と祖母の馴れ初め、そして恋のライバル?
第41話 女剣客、祖父と祖母の馴れ初め、そして恋のライバル?
「それにしても、これだけ真っ二つなんて、使用者の腕か作り手の腕が悪いかのどちらかよね」
工房に入ったガーデニアは月華の折れた部分を見ながら皮肉たっぷりにつぶやいていた。
その際に一瞬、工房の入り口で立っている私のことを見ていたので前者だと思っているようだ。
「まあ、これを作った時はワシもミナトぐらいの時だからなあ、作り手の腕が原因かもしれんな」
ガーデニアの皮肉が聞こえたのか、台所からお茶を持ってきたミチ爺が彼女の言葉に返しながら私の隣に立った。
「……そうなの?」
「そうじゃよ、オルハには言ってなかったかの? あれは若かりし頃に葉子さんへ渡そうとしてものなんじゃよ」
その直後、ミチ爺は今で言うところのプロポーズするためになと話していた。
「オルハはわからんかも知れんが、葉子さんはあの一帯では剣客小町として名を馳せており、誰もが惚れておったんじゃよ。 もちろんワシもじゃが」
「……おばあちゃんから聞いたことがあるかも」
私の返答にミチ爺は笑っていた。
「その当時は誰もが葉子さんにプロポーズをしっていったもんじゃ、だが彼女は『自分より強い者としか夫婦になるつもりはない』と言い続けててな」
それでも祖母と夫婦になりたかった男たちの後を絶つことはなかったそうだ。
「それを見てワシは自分の家が鍛冶屋であったから、それをうまく利用して葉子さんにプロポーズしようとしたんじゃが、先に大治郎のやつに越されちまったんじゃよ」
大治郎というのは祖父のことだ。元々実家の近隣の集落で道場を経営してたとかで、用事があって私の故郷に来た際にバッタリ祖母と会ったとか。その後紆余曲折あり夫婦になったとか。
「おかげで、せっかく作った月華は無用の産物になったわけなんじゃが、巡り巡って葉子さんの孫であるオルハに使われたのじゃから、この刀も本望じゃろう」
ミチ爺は悲しそうな表情を浮かべながら視線を正面に向けていた。
その先では、ミナトとガーデニアが金槌を使い、月華の剣先を交互に叩いていた。
「にしても久々に大治郎の名前を出したら会いたくなったのう、戻ったら酒でも持っていってやろうかの」
「……うん、そうしてあげて。 たぶんおじいちゃんも喜ぶと思うよ」
「大治郎のことじゃ、酒を飲みたがってると思うから墓石にかけてみるかの!」
「……おばあちゃんに怒られるよ」
ため息混じりに返す。
祖父は私が生まれた直前に病気で亡くなったと聞いている。
そのせいか顔を見たこともない。祖母が夫婦になった相手ならさぞかし強かったのだろう。
できることなら手合わせ願いたかったところだけど。
「ふぅ……なんとかなったな!」
ミチ爺と話を続けていると、黙々と剣先を叩き続けていたミナトが声をあげていた。
「オルハ、ちょっと見てみろよ!」
そう言いながらミナトは私を見るなり手招きをしていた。
そのまま彼の元に向かった先には、折れていたのが嘘だと思えるぐらい見違えた月華の姿があった。
剣先を白く光らせながら……。
「……すごい、別の刀みたい」
私がそう呟くと隣でミナトが自慢げな顔をしていた。
だが、その直後にミナトは苦悶の表情を浮かべることに。
彼の真下には足を上げているガーデニアの姿。
「いってぇぇぇぇぇ!!!!」
ミナトは大声を上げながら右足の脛を押さえながら大きな声をあげていた。
どうやら、ガーデニアが蹴り上げたようで、私がみたのはその直後だったようだ。
「何で脛を蹴った!! めちゃくちゃいてーんだよ!」
怒鳴りつけるミナトを怖がる様子もなくガーデニアは口を尖らせていた。
そしてすぐに私の顔を見ると、先ほど同じようにこちらへ突きつけるように人差し指を向けていた。
「言っとくけど、ミナトがやりたそうな顔してたから協力してあげただけだから!」
鼻息を荒くしながらそれだけ告げると工房を後にするガーデニア。
「お嬢ちゃん、どこへいくんじゃ?」
「お風呂!! 言っとくけど覗いたらタダじゃおかないから! ミナト以外は!」
声をかけたミチ爺に対して甲高い声でそう言いながら洗面所の方へと進んでいった。
ふと、ミチ爺の顔を見ると、子供を見る親のように微笑んでいた。
「……すごい、以前のより軽くなってる」
刀の修復が完了し、焔纏刀の時のように青竹で試し斬りをしていたのだが、あまりの軽さに思わず声がでてしまう。
焔纏刀ほどではないが、月華もそれなりの重みがあったのだが、修復された月華は持っているのも忘れるぐらいの軽さだった。軽すぎて斬っている間に飛んでしまうんじゃないかと心配になるほどだ。
「あたりまえでしょ! その剣先に使われてるのは人間の世界にないミスリルで出来ているんだから!」
試し斬りを月華を鞘に収めていると、後ろでガーデニアが自信たっぷりな表情で話していた。
「……みすりる?」
「あー……オルハはわかんないよな。 ゲームとかやってればよく出てくる鉱石なんだけどな」
ガーデニアの横に立っているミナトが補足していた。
ミナトの話では鋼よりも打ち伸ばすことができるもので、しかも鋼より軽いとか……。
「まさか、現実でミスリルを打てる日が来るなんて思わなかったぜ!」
喜ぶミナトの横で、ガーデニアが頬を赤らめていた。
「あ、そうだその刀に名前つけないとな」
ミナトはパチンと音を立てていた。
榊木家では作った刀には必ず名前をつけていることを思い出した。
理由はたしか、ミチ爺が昔からある名刀のように誰もが覚えられるようにしたいからだとか……。
「……既に月華って名前があるでしょ?」
「修復したんだからその証は残したいだろ? ベタなところでいうと『月華・改』なんけど」
ミナトはぶつぶつと独り言を言っていた。
隣に立つガーデニアは構って欲しいのかミナトの服を何度も引っ張っているが考えることに夢中になりすぎているのか、全く反応していなかった。
「そうだ、見事に復活したのと生まれ変わったって意味で、『月華・凰』でどうよ!」
子供のように目をキラキラと輝かせながらミナトはこちらを見ていた。
「……どういう意味?」
「鳳凰の凰から取ったんだよ、凰って雌を現す言葉って聞いたことがあるし、使い手が女性だからぴったりだろ?」
正直意味はよくわからなかったが、興奮気味に話すミナトをみたら、無碍に否定するのが憚れてしまっていた。
「……そうね、それでいいわよ」
私の返事にミナトはガッツポーズをしていた。
——こういう素直なところは、昔から変わらないね。
そう思うと、気がつけば自分でも気が付かないうちに微笑んでいた。
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