第24話 女剣客×女配信者 コンビネーション攻撃発動!

 「……うん、10階に着いたようね」


 目の前のポータルの液晶には『10 FLOOR』と表示されていた。


 「それじゃ、配信開始しますね」


 シオンは意気揚々とカバンから小型ドローンを取り出して、起動させると鼻歌混じりにスマホから配信開始のボタンをタップしていった。


 『何かシオちゃん、今日はやけに上機嫌だね』

 「……多分、魔法を使えることを早くリスナーに伝えたいんだと思う」


 最初の練習から数日、アイリス曰く、シオンの魔力は徐々に上がってきていると話していた。

 ウインドカッターに関しては発動の速さも発動後の疲労感も減ってきており、積極的に戦闘に参加するようになっている。

 そのおかげもあってか、下北沢ダンジョンも10階のポータルに登録もできていた。


 ダンジョンを進めていく最中、シオンは配信に載せれたらリスナーさん喜んでくれると思うとずっと話していた。

 これまでできなかったのは、発動する度に疲れで配信どころではなくなっていた。


 「みなさーん! お待たせしました! シオちゃんねる配信開始しました!」


 ——いやっほーい! 久しぶりのシオちゃんだ!

 ——おじさん寂しかったんだぞー!

 ——もちろん女剣客さんも一緒だよね!

 ——おめぇ、オルシオはいつも一緒に決まってんだろ!

 ——今日もてぇてぇ成分を取り込みにきました

 

 シオンのスマホ画面を後ろから見ていたが、大量のコメントが流れてきているため何が書いてあるのかさっぱりわからかった。


 「もちろん一緒ですよ! オルハさん、リスナーさんが呼んでますよ!」


 そう言ってシオンはカメラを私の方へと向けていた。

 ドローンのレンズに横に広がった私の顔が写り、奇妙な感覚を覚えてしまう。


 ——きゃああああ! 女剣客さーん!

 ——女剣客さんは、今日もーかわいいー!

 ——女剣客俺だー!刀のサビにしてくれー!

 ——オルシオ!オルシオ!オルシオ!

 ——リスナーはオルシオ成分を欲しているのだ!


 『オルハちゃんもシオちゃんに負けじと大人気だね〜』


 インカムからアイリスの揶揄うような声が聞こえてきた。

 ちなみに自分のスマホから配信画面を見てみるが、先ほどと同じように大量のコメントが流れているが、相変わらず内容を確認することができなかった。

 シオンやアイリスは一体どうやってみているのだろうか。

 

 「それじゃ、早速出発しましょう!」


 シオンは元気よく話すと、杖を持って軽快な足取りで歩き始めた。


 ——何か今日のシオちゃんテンション高くね?

 ——たしかに、いつもとは違う気がする

 ——もしかして、女剣客さんと何かいいことがあったとか?

 ——ま、ままままままま、まさか女剣客さんと(自主規制)なことが

 ——女剣客さん、そこんとこどーなんですか!!!

 ——女剣客さん、俺、気になります!


 またもや画面に大量のコメントが流れてきていたが、多すぎて追うことができなかったので、ジャケットのポケットにしまってからシオンの後を追うことにした。


 ——あ、女剣客さん逃げた!

 ——これはもしかして何かあったか!

 ——女剣客さん、一言だけお願いしますー!


 先ほどから流れる大量のコメントを見て、1人のエルフがニヤついていることなどオルハとシオンが知る由もなかった。


 

 「アイリスさん、目の前に何かいませんか?」


 ダンジョンを歩き続けて11階へと辿り着いたところで、先頭を歩いていたシオンが足を止めてアイリスに声をかけていた。


 『うん、反応は2つあるね』


 自分も目の前を見るとうっすらとだが、2つの影を発見した。


 「……シオン、後ろにいて」


 彼女の前に立ち、いつでも刀を抜けるように準備をする。

 その後ろで地面に突きつける音が聞こえてきたので、シオンも魔法の発動準備を開始したのだろう。


 ——あれ、シオちゃん杖持ってる?

 ——そういえばさっきから何か持ってるのは気づいてたけど杖だったのか

 ——もしかしてシオちゃん魔法使えるようになってるの!?

 ——魔法って……あの魔法だよな……?(困惑)


 『リスナーのみんな、シオちゃんに気づいたみたいだね』


 アイリスがリスナーのコメントを見て、話しかけてきた。


 「……後でコメントみたら大喜びするかもね」


 敵の姿がまだ確認できないため、淡々とした返事しかできなかった。

 

 トン……トンとこちらに近づく足音が徐々に大きくなってきていた。

 そして、姿を見せたのは緑色の体をした2体のゴブリン。


 だが、手に持っているのは以前見たような小型のナイフではなく、木製の小さな杖。

 ゴブリンはこちらの姿を確認すると、2体とも同じように杖を大きく振り回し始める。

 

 『オルハちゃん、そいつマージゴブリンだよ! ゴブリンと違って魔法を使ってくるから気をつけて!』

 「……魔法?」

 

 インカム越しにアイリスの叫び出す。

 その間にマージゴブリンが持っている杖には小さな炎の球が。

 こちらに向けて杖を振り落とすと火の玉がこちらに向かって飛んできた。

 

 ——火の玉が飛んできたぞ!?

 ——ってかゴブリンって魔法が使えるのかよ!

 ——他の人の動画でみたことあるけど、マージゴブリンだったはず

 ——ゴブリンって知能低いはずだよな!?

 ——人間にも天才がいるからゴブリンにも天才的なやつがいるんだろ、知らんけど

 

 速度がそこまでないので避けることは可能だが、私が避けたら術式の構築で無防備になっているシオンに当たってしまう。


 「……それならッ」


 すぐに刀を抜いてから横に大きく薙ぐと、火の玉は分断され地面へと落ちていった。


 ——ちょちょちょちょ、女剣客さん火の玉切り落としたぞ!?

 ——マジかよ、魔法って斬ることできるのかよ

 ——彼女は特殊な訓練を受けております。みんなはマネしちゃダメだぞ!

 ——やば、キュンとした


 安心したのも束の間、もう1体のマージゴブリンの放った火の玉がこちらに向かってきていた。

 先ほどと同じように刀で振り払うも、交互に火の玉が飛んでくるため、こちらから攻撃を仕掛けることができなくなっていた。


 『オルハちゃん、大丈夫!?』

 「……今は何とか平気だけど、このまま続けられるとキツイかも」

 

 一瞬でもいいからこの火の玉による攻撃が止まれば攻撃を仕掛けることができるのに……


 「術式構築完了!」


 後ろからシオンの声が聞こえてきた。


 「オルハさん、発動させるので気をつけてください!」


 シオンはすぐに構築した魔法名を告げる。


 「ウインドカッター!」


 シオンの杖から風の刃が前方に向けて発射された。

 

 ——おおおお!シオちゃんが魔法発動させてるぞ!!!!

 ——まままままままま魔法! あれが魔法!?

 ——やっちまえぇぇぇぇぇ!


 前方からマージゴブリンが放った火の玉がこちらに向かっていた。

 

 「ぐぎゃ!?」


 だが、風の刃は火の玉を両弾し、そのまま敵を切り裂いていった。

 仲間がやられて驚く片割れのマージゴブリン。

 驚きのあまり、その後に放とうとしていた火の玉が消えてしまう。


 「……そこッ!」


 その隙を見逃すことなく、勢いよく刀を上空へと振り上げると、発生した衝撃波が残ったマージゴブリンを斬り裂いていった。

 

 ——おおおお! 女剣客さんの遠距離攻撃!

 ——何か俺もできそうな気がしてきた、不思議

 ——女剣客、まっまっまっぷたつぅ♪

 

 「……シオン」

 

 刀を収めてから、後ろにいるシオンへと声をかける。

 

 「あ、オルハさんお疲れ様でした!」


 シオンはスマホでコメントを見ていたが、すぐに私の方を見ていた。


 「……ありがとう、シオンの魔法がなかったら勝てなかったもしれなかったね」

 

 素直に思ったことを彼女に伝える。

 

 「そ、そんなことないですよ! オルハさんが時間を稼いでくれたから私も魔法が使えたわけで……!」


 シオンは顔を真っ赤にしながら両手をバタバタとさせていた。


 「うへへ……オルハさんに褒められたら顔のニヤけがとまらないんだけど……!」

 

 ……あれ私、変なこと言った?

 

 ——シオちゃん1きゅんいただきました!

 ——何だろう、ドキがムネムネしてきた

 ——堕ちたな(シオちゃんが)

 ——あぁ(口元腕組み)

 ——オルシオのおかげで今日もご飯がうまい!

 ——オルシオおかわり!

 

 『うっわぁ……オルハちゃんって天然ジゴロの節ありっていうか、シオちゃんチョロすぎじゃない!?』


 シオンは湯気が出そうになるぐらい顔を真っ赤にしていたが、オルハは不思議そうな顔をするだけだった。


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