コミュ障ぼっち、最強剣客として無自覚にバズる〜最弱魔物を真っ二つにしただけなのにバズってしまいました。え、実はS級モンスター? いやいやご冗談を〜
第12話:女エルフ、思考を整理する(SIDEアイリス)
第12話:女エルフ、思考を整理する(SIDEアイリス)
「それじゃそろそろ帰りますね」
ギルドの申請が終わり、お菓子をつまみながら話していちに日が暮れていた。
「いい時間だしね、ってオルハちゃんそんなところで寝ないの!」
カウンターテーブルの上でオルハちゃんが突っ伏しながら穏やかな寝息を立てていた。
大好きな白玉あんみつの食べ過ぎでそのまま寝てしまったのだろう。
「あ、いいですよ……! 疲れているみたいですし」
「ごめんね、まったくこの子は……!」
吐き出すように大きくため息をつく。それを見ていたシオちゃんが乾いた笑いをしていたのが見えた。
「それでは、お邪魔しました! オルハさんには後でLIME送りますね」
シオちゃんは玄関でブーツを履き終えると、ドアを開けて外へ出るとドアが閉まるまでこちらを向いて手を振る。
ゆっくりと鍵をかけてからリビングに戻ると、オルハちゃんがぼんやりとした無気力な顔でこちらを見ていた。
キャミソールの肩紐が肘まで落ちて下着の一端が見えてしまっているのだが寝起きで頭が働いていないのか、当の本人は全く気づいていないようだ。
「……しおんは?」
目の前に私がいることに気づくと目をこすりながら間の抜けた声で話し始めた。
「いまさっき帰ったよ、後でLIMEするってさ」
「……わかった」
そう言って、近づくと体全体を私に預けてきた。
「……眠いから、部屋まで……連れてって」
頭を私の肩に乗せながら今にもかき消されそうな声で呟いていた。
「まったく世話のかかる子だなぁ、もう!」
そのまま引きずるように彼女の部屋に行き、ベッドの上の布団を捲りあげると吸い込まれるように布団の上に倒れ込む。
布団に入った瞬間、心地よいのか先ほどと同じような寝息を立てていた。
「さてと、それじゃ今のうちにやることやっちゃうか……」
ゆっくりと部屋のドアを閉めると、そのまま向かいの部屋へと入っていった。
入った部屋は6畳と若干の狭さを感じる広さ。
ベッドや収納棚を置くと使えるスペースは3畳あればいいぐらい。
残った3畳も趣味や隣の部屋で健やかに寝ているこの家の主人の補佐をするための道具で埋め尽くされている。
「よっこらせっと……」
机の前で無造作に置かれた椅子に座り、机の方へと向きを変えると、足元にあるPCの電源を押す。
すると机の上で向き合うように設置されたディスプレイが煌々と照らし出した。
「パスワードはっと……」
キーボードでIDとパスワードを入力すると画面には『ARLV OS』の文字に大きな樹木と弓のイラストが表示されていた。
元々、このPCには誰もが使うオペレーティングシステム、俗にいうOSが入っていたのだが色々と手を加えて、オリジナルのOSを入れている。
「もう少し改良したいんだけどなあ……OSのバージョンアップまだかな」
起動までに必要なコマンドを打ち込みながら独りごちる。
この『ARLV OS』は現代も生きるエルフが研究と暇つぶしで作ったエルフ専用のOS。
元々は分厚い書物に載せていたものをデータベース化したものだったが、自分でも独自の改良を加えてダンジョンの補佐ができるようにしていた。
今でもなんとかオルハちゃんの補佐はできているが、まだ改良の余地はごまんとある。
先日のデモンウーズの時は全公開に設定されていたので興味本心で買った大型のタブレットで実際に見ることはできたが。
大元のシステムであるARLV OSのバージョンがあがれば、それも可能となるがそもそもエルフの特徴として他の種族と比べて時間の感覚が鈍いことや営利を考える種族ではないことが相まってバージョンアップがとてつもなく遅い。
「最後の更新が20年以上前って企業だったら見放されてるよね」
自分のそんな種族の1人であることを思うと、思わず乾いた笑いがでてしまう。
「まあいいや、とりあえず……」
キーボードをカタカタと打ち込んでいくと片方の画面にデモンウーズと戦うオルハちゃんの姿が映し出される。
「それにしても何であのダンジョンにコイツが……」
このデモンウーズはダンジョン内を徘徊するモンスターとは違う。
基本的にモンスターたちは敵対する種族以外を襲うことはない。
——だけど、コイツらは目の前にあるもの全てを喰らい尽くす。
人間はもとより、ダンジョン内を彷徨くモンスターや私のようなエルフでも——
本来町田ダンジョンの最奥にいるのは巨大な斧を持つミノタウロスのはずだがおそらく、デモンウーズに飲み込まれたのだろう。
映像を見返すと、オルハちゃんが猛攻から避けているところで足元にボロボロの斧が落ちているのが見えた。
「いたのは事実だとしても、いったい誰が……」
あの時、デモンウーズは召喚魔法陣を使って呼び出されていた。
惨殺されたあのギルドマスターはどう見ても普通の人間。
召喚魔法陣を使うには膨大な魔力が必要になる。
魔法を使える人間が増えたとはいえ、寿命が100年も満たない人間の魔力では全く足りない。
「そうなると考えられるのは……アイツらが動き出しているとしか考えられない」
結論が出たことで、どっと疲れがでてきたのでパソコンをシャットダウンさせてから椅子の背もたれに全体重をかける。
「そうだとしたら、こっちも急がないと……」
そう思いながら部屋に立てかけられた時計へと目を向けると思っていた以上に時間が経っていたことに気づく。
「寝る前にシャワーでも浴びてこよう」
勢いをつけて椅子から立ち上がり、部屋のドアを開ける。
「うわっ、オルハちゃん起きてたの!?」
目の前に先ほどベッドの中で夢の世界へと旅立っていたオルハちゃんが立っていた。
寝相が悪かったのか、髪はボサボサになり、先ほどは片方だけだったキャミソールの肩紐が今は両方肘まで落ちていた。
胸元に引っかかってずり落ちることはなさそうだが……
なんだろうすごい悔しさを感じてしまう。
「……うん、お腹すいた」
「あんだけ食べたのに!?」
シオちゃんと一緒に食べていた時に彼女の倍以上の量を食べていたはずだが!?
ってかさっき白玉あんみつ大量に食べてたよね!?
もしや、それだけ食べるから出るとこ出ているのか!?
「わかったよ、その前にお風呂入るけど一緒に入る?」
「……うん」
叫びたくなる衝動をため息をこぼすことで誤魔化しなら言葉をかけるとオルハちゃんは眠たそうな目をこすりながら頷いていた。
「こんな姿、シオちゃんやリスナーが見たらどう思うのやら……」
当の本人はまだ眠気がとれないのかフラフラと蛇行しながら風呂場のある洗面所へと入っていった。
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