第28話

 妖とは何か。

 その存在についての説明を聞き、少なくない驚愕を得た僕を他所に零さんは説明を続ける。


「妖。その存在が目的。それは非常に複雑です。基本的に彼らの意思はひとつではなく、群体の集合体となっているのです。故に明確な意志はなく、怨念の塊と言えどその心は虚ろ。生きとし生けし者への怨念を持っているものの、その多くは何もすることは無いのです」

 

 僕に食べられそうになっている時はみんな恐怖で逃げ出そうとするけどね?虚ろとはとてもじゃないが思えない。

 食べられたくないという確固たる意思しか彼らからは感じられない。


「ですが、妖の存在は間違いなく害です。その存在は生命の運命を少しづつ蝕み、多くの悲劇を作り出します。存在するだけで害悪であり、何もせずとも倒すべき敵であることには変わりません。ただ、妖を倒しまくるのも危険です。妖を倒したものには妖のもつ運命を呪う妖気がまとわりつき、取り返しのつかない悲劇を……」


 ここで零さんは言葉を止め、僕の方へとちらりと視線を送ってくる。

 確かに……そんな性質があるならなんで僕は無事なのだろうか?

 はっ!!!もしかして、僕の運が悪いのって……!?こいつらを食べているせいだったりするのだろうか?


「ゔゔん……よし。そんな妖ですが、中には人へと積極的に襲いかかってくるものもいます。他の魂を蝕み、飲み込むほどに強力な魂によるもの。怨念を取り込みすぎたもの。他者に操られるもの……その理由は様々ですが、どちらにせよ。人に襲いかかる妖がいれば緊急案件、急いで討伐する必要があります。前にもありましたが、その存在が確認され次第放送が鳴り響き、多くの祓魔士が対処することとなります」


 なるほど。

 あの放送みたいな感じ……ふむふむ。なるほど。他の魂を飲み込むのほど強力な魂。あの独特な味わい深い一つの魂が所以は他の魂を飲み込んだことか。

 良いね、僕の中にあった疑問があるどんどん解けていく。


「妖の話はここら辺にして次は祓魔士についての解説に移りますね」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る