第22話

 僕にとって一番大事とも言っていい食料の大量破棄。


「説明と言われてもほとんど何もわかっていない状態なので特に話すことはないですよ?気づいたらなんか西洋風のお城のようなところに出て、そこでたくさんの妖に襲われたから返り討ちにして、全力で逃げる妖を追いかけていたら西洋分のお城から元場所に戻ってきて今。僕から言えるのはこれくらいだよ?」


 そんな僕は有栖さんに脅されるような形で尋問を受け、一体何があったのかをざっくりと話していた。


「……なるほど」


「じゃあ、一番の謎だ。お前の強さの秘訣はなんだ。どうしてあほみてぇな数の妖を退けられた?」


 僕の質問に対して神妙な顔つきで頷く零さんと続く形で僕へと質問を浴びせてくる有栖さん。


「なんで有栖さんは歩けるの?」

 

 僕は有栖さんの質問に対して質問で質問を返すような言葉を口にする。


「あん?テメェ何を言ってやがる……?実際に歩いてみせているだろうが」


「それと同じ。呼吸と同じように僕は生まれながらに妖を食べれたし、妖をパンチで殺せた。何故出来るの?と言われても何故出来ないの?としか答えられないよ」

 

 生まれたその時から当然のように行っていたことに対してなんで出来るの?と聞かれても困る。

 

「……ふざけているのか?」


「ふざけてないよ?そもそも別に僕は祓魔士の一族じゃないし……両親も祓魔士じゃない。調べてみればすぐにわかると思うよ。僕は祓魔士と無縁の生活を送ってきたし、それに伴って僕の持つ知識はほぼゼロ。ふざけているのではなく、本当にわからないんだよ」


「テメェに行ってないだけで両親もこっち側かもかもしれねぇだろ」


「酒カスヤ二カスギャンブル並びにセッ〇ス依存症な薬中の母と、母の愛人と殴り合いのもめ事を起こしてそのまま愛人に殴り殺され、現在は白骨遺体として押し入れに押し込まれている父が祓魔士と言うなら別だけどね?」


「……おぉう」

 

 僕の両親のクソっぷり……というか普通になんで捕まっていないのか不思議になるような人物像を聞いた有栖さんがどんな表情を浮かべれば良いのか戸惑いながら何とも言えない声を漏らす。


「……とりあえずは本部の方に戻りましょう。そこで今後の方針を告げます。正直に言って唯斗殿の実力は我々の想像以上でした。大幅に方針を転換する必要がありますので」


 地獄のような雰囲気となってしまったこの場を零さんが強引に取り仕切り、話をしめたのだった。

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