第20話

 実に美味しそうな匂いを醸し出していた玉座に座る妖は僕の一撃を前にして全力逃亡を繰り返していた。

 王っぽい妖を守るためか、僕へと次々襲い掛かってくる妖の悉くを叩きのめし、襲い掛かってきた数多の妖の中でも美味しそうな四体の頭を手にしたまま逃げる王っぽい妖を追いかける僕は。


「ゆ、唯斗殿?」

 

 ようやく零さんたちのいた場所へと戻ってこれる……いや!?戻ってこれたのは良いけどあの王っぽい妖は!?


『ギィアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!』

 

 僕が慌ててあたりを見渡した瞬間。

 何か


「ま、不味い!?」


「逃がさないよッ!」

 

 僕は手に持った一つの頭を投擲。

 王っぽい妖の体をぶち当て、そのままその体を傾けさせる。


『お、おのれぇぇぇぇぇぇええええええええええええええええええ!?』


「はっはっは!追いついたよ!」

 

 一瞬で王っぽい妖の元へと移動した僕は拳を一つ……巨大な王っぽい妖


「ありゃ?これでも終わらんと?」

 

 体組織の八割ほどを吹き飛ばしてやったが、それでもなおこの妖は終わらない……残った二割の体から大量にして巨大な触手が幾重も生え、僕の方へと伸びてくる。


「じゅるるるるる」

 

 僕はそれを大きな口を開け、その悉くを吸い尽くす。


『ば、化け物が!?」


「君が言う?」


 大量に膨れ上がっていた触手は僕に吸われてなくなり、残ったのは最初に出会ったときの姿となった王っぽい妖……素晴らしい再生能力じゃないか。

 再生能力を持った妖と出会ったのはこれで二体目だよ。

 こいつなら無限の食料になれる。


「ふんふんふーん」


 どう調理しようか。

 そんなことを考えながら王っぽい妖の元へと近づいていく僕へと。


「唯斗殿ッ!!!それを倒せるのでしたら早々に倒してください!それだけの巨大な妖との戦闘を長引かせると何の関係もない一般人に被害がッ!」

 

 どう移動してきたのか。

 いつの間に僕のすぐ近くにまで近づいてきていた零さんが僕へと声をかけてくる。


「……はぁー。しゃあなし」

 

 本当は心行くまでご馳走を堪能したい……だが、僕がこれを放置したことで他の人にも影響が出る可能性があるとなると遊んでばかりもいられないだろう。


「さようなら……僕の愛しの食料」


『……は?』

 

 ジャンプで遥か上空へと上がっていた僕は空気を蹴って加速し、一瞬で地上へと移動。

 王っぽう妖のすぐ隣へと落ちた僕はそのまま王っぽい妖の体を掴み、遥か上空へとぶん投げる。


「ほい」


 僕は遥か上空へと飛んでいく王っぽい妖を狙ってその場で全力のパンチを一発。


『……ッ!?』

 

 僕が全力で振るった拳による衝撃、拳圧は何もかもを消し飛ばし、遥か上空の王っぽい妖もそのまま完全に消滅させたのだった。

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