第19話
いともたやすく白鬼王を倒した零。
「す、すげぇ……」
そんな彼女を前にして有栖は感嘆の声を漏らす。
「まさか、ここまでとは……」
零は日本に五人しかいない最高位に位置する濃紫級の祓魔師であり、そんな最上位の祓魔士の中でも零は最上位に位置する強者であると言われており、当然有栖もその情報は知っていた。
しかし、実際に生で戦っているところを始めて見た有栖は零という女の規格外さを明瞭に理解し、恐れおののく。
圧倒的な力であった。
「お二人とも、大丈夫でしたか?」
「あんたのおかげで何ともねぇよ」
「だ、大丈夫……です」
零の言葉に二人はそう答える。
「それなら良かったです。あとは」
その答えを聞いて満足そうに頷いた零は二人から視線を外し、辺りを見渡し始める。
「唯斗殿が何処に行ったのかで──ッ!?」
そんな彼女は突如として自身の背筋に走った悪寒を前に身構える。
『キィハ』
そんな中、空間にひび割れ、一つの亜空間への入り口がぽっかりとこの世界に開かれる。
「……何?」
そんな中から出てきたのは一つの小さな妖……大した力も持っていなさそうな存在であった。
零の背筋に走った悪寒とは何であったのだろうか?
『……お助けぇ』
そんな妖は零太刀へと目も向けずに一目散に逃げだし、どこかへと消え去っていく……そのあまりにもな速さに零は呆気を取られ、それを逃がしてしまう。
「よっと」
そして、そんな妖に続く形で唯斗もその姿を現す。
「……あれ?戻ってきた?って!?あいつってば一体何処に行きやがったッ!?ここにまで来て逃亡とかそんなつまらんこと揺らさんぞ!メインディッシュは逃さん!」
四体の巨大な鬼の頭でお手玉し、その口から多くの妖の触手のようなものが飛び出しているという非常にユニークな姿で。
「ゆ、唯斗殿?」
じゅぼぼという音を立てて触手を口の中に含んで吸い、そのすべてをきれいに胃の中へと収めていく唯斗へと零が声をかける。
「「「……ッ!?」」」
そんな瞬間であった。
いきなり妖の持つ力で妖力が膨れ上がり、高層ビルを超えるほどの巨大な化け物が姿を見せたのは。
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