第17話

 これまで唯斗を探していた関係で自分の分身体に妖と戦わせていた零。

 

「唯斗殿探しは後にすると致しましょうか……そろそろ分身体もキツイ頃合いですし」

 

 そんな彼女は分身体を消し、それと戦い続けていた妖へと強烈な殺気をぶつけることで自分に気づかせる。


『……』

 

 零たちが居る場所から少し離れたところで分身体と戦い……そして、その相手が消え、困惑しているところにぶつけられた殺気。

 それを受けてようやく自分がまともに相手されていなかったことに気づき、憤怒の顔を浮かべながら妖は零を睨みつける。


「二人は私の後ろで待っていってください……あぁ」


 一瞬にして零との距離を詰め、零を見下ろす妖は。

 

『随分と舐めた真似してくれるじゃ!?』


 零に触れられただけで一気に吹き飛ばされる。


「必ず二人のことは私が守るので安心していいですよ」

 

 妖を一瞬で吹き飛ばした零は一振りの刀を何もないところから抜き、そんな頼もしい言葉を口にする。


『……どこまでも俺を無視するってか。ったく。これじゃあ、俺が噛ませ犬のようじゃねぇか。サイコロステーキにでもなるのかっての。さっきまでは全然本気じゃねぇ、ここからが俺の本気……って!それは噛ませ犬のセリフだろうが!』

 

 そんな零に対して、妖は零の手で吹き飛ばされても一切ダメージがなかったのか、軽い足取りで立ち上がり、冗談を交えながら口を開く。

 そんな妖から溢れだす力はどんどん膨れ上がっている。


「……そこまで明確な知性を」

 

 有栖は明確な知性を持った妖を前に眉を顰める。

 基本的に妖は知性が高ければ高いほど強くなる傾向にあり、明確な知性を持って人間のように話し出す妖は悉く強者であると言って良い。

 そんな妖の中でも目の前にいる軽率な妖の強さは他と比べても、その身から溢れる威圧感、力、闘気、そのどれをとっても異質であり、その脅威度は妖の中でもトップクラスであろう。


「……大丈夫なのか?これ」


 有栖では絶対に敵わぬ相手……否、それだけではない。

 名家である土御門家に生まれの有栖の知る祓魔士の中で誰も勝てなそうな妖を前に有栖は冷や汗を垂らす。


「問題ありません」


 そんな有栖へと零は一切余裕を崩さぬまま口を開く。


「私は最強ですので」


 一切気負うことなく、自然な足取りで妖へと迫り……確固たる意志と絶対の自信がこもった強い言葉を告げる零は妖の前へと立つのだった。

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