第16話
唯斗がどこかもわからぬ場所に飛ばされていた頃。
「戦う手段もねぇアンタはうちの後ろにいな。守ってやっから」
零、佐奈、有栖も妖からの襲撃を受けていた。
「……は、はひ」
唯斗が消えた瞬間に、岩の方から飛び出してきた一体の強力な妖に数十にものぼる大量の妖。
少し離れたところで強力な一体の妖と戦っている零の代わりに、有栖が佐奈を守りながら数十にものぼる。
「おせぇよ」
火をつけたタバコを口に咥えたまま、有栖は華麗で見事な舞を踊るかのように体を動かし、その手に握られている拳銃で妖を次々と葬り去っていく。
ひらりと舞う有栖の動きに妖は翻弄され、そのまま確実にワンショットを決められていく。
「……すごい」
実に美しく、目を奪われるような巫女舞を披露する有栖。
その口にはタバコが咥えられ、その手には拳銃が握られている。
その姿は着ている巫女服並びに踊る舞とはまるで合わないミスマッチであったが、そこもまた目を奪われる一因の一つであった。
「……ったく。体に染みついちまっているからどーしようもねぇが、この舞はやっぱ嫌だな。うちに似合わねぇ」
既に数十もいた妖の数は十数体にまで減っている。
「……こいつら程度にもある程度の知性がありやがるのか。何なんだ、こいつらは」
それだけ減った段階で妖の動き方が変貌。
有栖を囲うように展開し、空へと自由に浮かびながらゆっくり動き、隙を伺っている妖たち。
ただ無策で突っ込んでくるばかりではなくなった妖たちを見て有栖は忌々しそうに吐き捨てる。
「……出来ればこっちから攻めたかねぇが」
有栖は銃を構え、いつでも行動できるようにしながら妖たちを静かに眺める。
「まぁ、いずれ動くだろうし、それまで待っても良い……にしても問題は零の方だ……いくらあいつとはいえ、一人であれを相手にするのは」
そんな最中、有栖の心配事は少し離れたところで一体の強力な妖と戦っている零のことだ……あの妖は有栖の力じゃその強さを図ることすらも出来ないほどの格別した力を持っていた。
「それに関しては問題ありませんよ」
だが、そんな有栖の言葉を否定するように、一瞬で有栖の周りにいた妖を消し飛ばし、彼女の隣にいつの間にか立っていた零が口を開く。
「……ッ!?どっから!?」
「あれと戦っているのは私の分身です。分身程度と互角ならば倒すのに大した手間ももかからないでしょう……それにしても、唯斗殿は何処に行ったのでしょうか。さっきからずっと探しているのですが、まったくもって見つからないのですが……?」
これまでずっと唯斗の行方を探っていた零は驚愕する有栖を無視して一人、ゆっくりと首をかしげるのだった。
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