第15話

 どこまでも黒く……自分がどこにいて、どこに立っているのかもわからなくなるような実に不思議でどこか不安にもなってくる場所。

 

「こことらどこだいら」

 

 僕はとりあえず思いっきりパンチを一発。

 適当に放っただけの一発であったが、それでも僕の一発は目の前の空間を削り取り、黒い世界に光を差し込むことに成功する。


「とりま入るか」

 

 僕は一切の躊躇なくその光へと飛び込む。


「おぉ?」

 

 すると、一気に僕の視界は晴れ、全然知らないところへと出る。


「結局何処かはわからないって言うね」

 

 ただただどこまでも黒いだけの世界を乗り越えて僕が出てきたのは謎の場所……まるで西洋のお城の玉座の間のような場所へと出てきた。

 本当に全然知らない場所なんだけど。


『……我の、結界をそういともたやすく潰すか』

 

 全然知らない場所に出てきて困惑していた僕へと向けられる一つの声。


「およ?」


 その声がした方へと視線を向けると……一体いつからそこにいたのか。

 いつの間にか出現していた巨大な玉座へと腰掛ける一つの巨大な怪物が出現していた……その体長は推定で5m超え。

 信じられないくらいデカい。


『流石は、我が配下を瞬殺しただけはあるということか」

 

 なんか勝手に良くわからないことをしゃべっている怪物……妖はその巨大な玉座より立ち上がり、僕の前に立つ。


「ふふっ。美味しそう」

 

 僕が己の人生の中で二番目くらいの香しく、実に食欲のそそられる匂いを前に僕は口角を歪ませ、涎を垂らすのだった。

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