第12話

 雫さんの案内によってやってきた部屋の中。

 そこには僕と真倉さんにここまで僕たちを案内してくれた零さん。

 そして、タバコを吸いながら部屋の中で待っていた巫女服の少女、有栖さんがいた。

 

 彼女のフルネームは土御門有栖。

 かなりの良家の生まれであり、将来有望な祓魔士であるらしい……良家?まるで彼女は良家に見えないんですが。


「自己紹介の時間と言ってもいいですか、そんなものしなくとも自ずと仲は深まっていくでしょう」


「……は、はぁ」


「……そ、そうかな」


「ちっ……」


 零さん。

 僕は有栖さんと仲良くなれる気がしません。


「さて、それではまず初めに簡単な説明から行きましょう。我々祓魔士はこの世界の全生命に仇為す敵である妖と戦う存在です。戦いの歴史は縄文時代より始まり、我々の組織の根底が出来たのが古墳時代。組織として完成したのが平安であり、今日まで続く日本の歴史と共にあった我々の組織図は非常に巨大で複雑ですが、とりあえずお二人に覚えておいて欲しいのは二つ」


 なるほど。

 濃紫級とかいう謎の称号はマジで冠位十二階から来ているのか……平安時代に組織として完成したらしいし、間違いではないだろう。


「まずは妖と戦う実働部隊の存在とそれを支援する後方部隊の存在です。まず、二人は実働部隊として動いてもらうことになります」


「えっ!?ちょっと待って、私は祓魔士になるなんて一言も……ッ!」


「申し訳ありませんが、この申し出は受け入れてもらわなければなりません。ご自身の立場はお隣にいる『謎』のせいで掠れていますが、佐奈ども十分イレギュラーなのです」

 

「……ッ」

 

 不満げに声を上げた真倉さんの言葉は零さんの言葉に封じられる……どれだけ理不尽であっても相手は恐らく政府公認の裏組織。

 どう考えても一個人で歯向かえる相手ではない。


「実働部隊は基本的にスリーマンセル。三人で妖と戦うことになります。唯斗殿、佐奈殿、有栖殿がスリーマンセルとなり、私はその御三方の指導役とでも言いましょうか。若いスリーマンセルには年長者が一人、就くことになっているのです」


 零さんも結構若そうだけどね?まだ20前半とかそこらに見える……祓魔士の世界は早熟なのかな?


「後方部隊は我々の支援を行ってくれます。情報統制、隔離、補給……何から何までを任せて大丈夫です。主に理解しておいてほしいのはこれだけです。問題はございませんか?」


「とくにはないです」


「……ない、です」


「それでしたら良かったです……であれば、早速任務へと取り掛かりましょうか」

 

 零さんは座っていた椅子から立ち上がり、僕たちに向かってそう告げた。

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