第8話

 唯斗の言葉を受け、妖が暴れている現場へと一緒にやってくることにした佐奈。


「……あれはズルいと思うのよ」

 

 どう考えても見た目がヤバい妖にかぶりつき、まるで人間とは思えぬ行動をしだす狂人が唯斗ではあるが、それでもその見た目は絶世の美少年。

 あの顔で真っ直ぐ自分のことを見据えながら『僕が守るから』などと言われ、きゅんと来ない女の子がいるのだろうか?いや、いない。

 

 そんなことを考えながら一緒に唯斗や凛、茉莉などと共に現場へとやってきた佐奈は早速来たことを後悔していた。


「逃げんなァっ!!!!!」


『ぎ、ぎしゃ!?ぎしゃあああああ!』


『にぃぃィィィ、二ぃ、ニィィィィィイイイイイ』


『ぼkbrbふぁk;あ』

 

 どういう原理なのかは知らないが……人が誰もいなくなってしまった空が赤い世界で。

 大暴れする数十体もの妖……そして、そんな彼らへと果敢に飛び掛かり、妖のはらわたを武器として振り回しながら妖以上に暴れまわり、妖へとかぶりついてその巨体を一息で吸い尽くすもういろいろと信じられない唯斗の姿。


「……何が、起きているの?」


「こ、ここまでのレベルなの……?あの場にいた中級の妖だけでなく、上の妖もたくさんいるのに……」


「だ、誰だよ……あいつ」


「あ、新手の妖か!?」


「……こ、攻撃した方が良いのか?」


「ま、待てよ……一応人のような姿をしているのだし、もしかしたら話し合いができるかもしれない。あれだけの大暴れを見せる妖と話し合いで済ませられるのだとしたらアドだ」


「待てよ!暴れる妖はすべて殺す。そこに例外はないはずだ」


「まぁ……待て。もしかしたらあれが妖でなく人の可能性もあるだろう?」

 

 そして、そんな唯斗の姿を見て口々に困惑の声を漏らす祓魔士の方々。

 彼ら、彼女らの中には……いや、むしろほぼ全員が唯斗が妖の一人であることを疑わず、それを前提として話を進めている。


「……私、何しに来たんだろ」


 こんなの見せられてどうすればいいのだろうか?

 ただ唯斗が妖よりも妖らしく暴れている姿を見て……一体何を参考にすればいいのだろうか?

 

 学校の制服、戦闘方法なし。

 場違いでしかない佐奈は死んだような目で唯斗の無双ぶりを見ながらぼそりと感想を漏らすのだった。

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