第2話
妖……それは、遥か古代より人間の世界と共にあった異形の怪物。
その存在と性質は特異と言う他ない。
生きとし生ける者の怨念、怨嗟、魂の残渣が混ざり合って誕生する生命と呼ぶことの出来ぬその不可思議な存在は普段、生命に触れることも干渉することもない。
無害であると言えるだろう。
そもそも妖は世界のほとんどの人が目に見えぬ存在なのだ。
存在を知っている者の方が少なく、多くの人が妖に関わらず、また被害を受けることもなく
だが、それでも明確に妖は生きとし生けるものすべての『敵』である。
存在しているだけで世界の在り方へと悪影響を与え、時には生命へと牙を剥いてその身を吸収することもある。
未だ詳しいことは判明されておらぬが、それでも脅威であり、倒すべき存在である妖と日夜戦う者がこの世界に少数ながら存在していた。
その存在の名は世界各国によって異なるが、こと日本において。
祓魔師と呼ばれていた。
「馬鹿者がァッ!これはお遊びではないのだぞッ!!!このような報告書が通ると思っているのか!」
日本管轄の表舞台には決して立たぬ組織であり、祓魔師を管理する陰陽寮の一角で。
とある一人の少女が妙齢の女性に叱責されていた。
「事実なんです!」
「妖を食べる少年なんぞいてたまるかぁぁぁぁぁああああああああああ!!!」
「いるんですぅぅぅぅぅぅぅううううううううううううううううううう!!!」
ぶつかりあう少女と女性の叫び声。
「なんなら今も食べていると思いますよ!?おやつー、とか言ってここに来るまでの道中に小さな妖捕まえていましたし!」
「んなぁわけあるかァっ!!!良いだろう!そこまで言うなら見に行ってやる!というか、連れてきているのか!?先にそれを言え!」
「そ、それはすみません……ちょっとあまりにもありえない光景過ぎて、動転していました。こちらです!」
「とりあえず案内しろ」
少女と女性が向き合っていた一つの執務室を出て、応接室の方へと向かって歩く。
「何も知らぬ一般人をここにいつまでも拘束しているわけには……」
「ほ、ほんとなんです!本当に食べているんです!」
「冗談も大概に……ッ!え?」
口論しながら進み、とうとう辿り着いた応接室。
そこの中にはテーブルの上に教材を広げて勉強を行う少女。
「食うとるなぁ」
「でしょう?」
そして、妖の頭を手に持って美味しく頬張りながら少女へと勉強を教えている少年の二人が応接室の中にいるのだった。
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