第8話素直な気持ち

俺は恵さんに背中を押され、麗華の元へ向かった。

「麗華居るか?」

「え!?」

「ん、居るのか入るぞ」

「待っ!」

俺は、言葉を最後まで聞かず、部屋へと突入した。

……そこで見た光景は今まで見たことの無いほどにゴミが散乱した部屋だった。

俺は目の前の光景に唖然としていた。

「何か言いなさいよ!」

「いや……なにこれ」

「なによ!勝手に女子の部屋に入ってきてその発言に顔は!」

俺は、どうやら相当酷い顔をしているようだが……俺は悪くないと思う。

だってあんなゴミ溜め見せられたら、誰でも酷い顔の一つするだろう。

だから俺は悪くない。

「俺悪くないでしょ……いきなりゴミ溜めを見せられたら誰でもこんな顔にもなるさ」

「ゴミなんかじゃない!」

「ゴミじゃないなら!何だって言うんだよ!」

「全部私にとって大事な物なの!ゴミなんかと一緒にしないで!」

「大事な物なら整理くらいしろ!俺も手伝うから!」

「え……」

「え……じゃねぇよ!こんなに散らかってたら虫も湧くぞ!」

「それは嫌!」

「ならさっさと片付けんぞ!」

その後、俺と麗華は一時間程掛けて全て掃除した。

「ふぅ……一先ずはこんなもんかな」

「部屋が綺麗に……」

「これくらい自分でもやろうぜ……」

「気付いたら部屋がきたなくなってるから掃除めんどくさくなっちゃうんだよ」

「もはや能力だよそれ……」

俺の言葉を境に、二人は黙り込み部屋は静寂に包み込まれた。

(会話続かねぇ……でもちゃんと仲良くしないとだしな〜くそっ!女子と会話してこなかったのが祟ったか!)

(男の子との会話……何すればいいのか分からない……でもせっかく手伝ってくれたしお礼ぐらいはしないと)

「なぁ」

「ねぇ」

俺らは喋るタイミングがかぶってしまい、二人とも黙り込み、譲り合ってるのが漫画の世界のようで、おかしくなりお互い大笑いしてしまい一気に空気が軽くなったのでやっと話し始めることができた。

麗華と今回初めてまともに話したが、ちゃんと話も通じるし面白い。

やはり恵さんが言った通り、俺にも優しくしようと頑張っているのが伝わってくる。

(こいつは俺にも優しくしようと頑張っていたのに俺は逃げようとしていたのか……)

そう考えると何だか悪い気持ちになってきたので、いったん飲み物を取ってくると言って部屋から逃げるように、リビングに向かった。

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