第3句 花の下 皆が来るまで ふたりきり

ソメイヨシノの季節は終わり。

山桜が咲いていた。


校舎から離れた。

公園での写生授業。


何だか一人になりたくて。

ひっそりとたたずむ一本の木を。


私は見つめ。

下書きの鉛筆を走らせていた。


只の落書きのようで。

色を重ねる気にもならなかった。


そんな時。

君の声がした。


「結構、うまいじゃん・・・」

振り返ると、白い歯がこぼれていた。


「なっ・・ど、どうして・・・?」

私の声は君に、どんな風に聞こえたのだろうか。


頬が熱い。

恥ずかしさに、泣きたくなる。


「俺もここで、描こう・・・」

私の隣りに座りながら言った。


パレットを挟んで。

60㎝の距離に君が座った。


無邪気な無神経さが。

私には嬉しかった。


「あっー・・・いた、いたぁ・・・」

あの子の声。


どやどやと。

四、五人が連れ立って近づいてくる。


できれば。

二人きりの時間に。


もう少しだけ。

浸っていたかったのに。


君に見えないように。

唇を噛む、私でした。

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