ベルトコンベアーとエンドレス
・ 二〇二八年 七月三十一日 午後八時二十四分
・ 東京都 柄沢市・奈切コーポレーション社長室
『いってぇ……本気で突き飛ばす奴があるかよ!』
『……す、すまぬ。やりすぎた……ところで、鋼一郎よ。お前さんの最後の質問とやら。結局ワシに何を聞こうとしたのじゃ?』
◇◇◇
奈切は耳の奥に刺していたイヤホンを外す。
「いやぁ、随分と妖怪と人間なんかが仲良くなっちゃって……」
すべて筒抜けだというのに、本当におめでたい連中だ。笑いを堪えるのも精一杯だった。
「これは決戦の日も近かったりするのかな?」
そう零しながら奈切は手元のPCへと視線を落とした。画面に映るのは奈切コーポレーションの保有するファクトリーの映像だ。
ベルトコンベアーを流れるのは凱機の内部フレーム。延々と続く生産ラインから次々と流れ出る未完成のフレームは、地の底から現れ、行進する骸の騎士団のようであった。
書類上このフレームたちはすべてムラクモとして完成され、祓刃へと配備されることのなっている。しかし、その実態は半数以上がコックピットの代わりにAIユニットが組み込まれ百鬼として完成される手筈になっていた。
AI達を司る中央サーバーには既にホテルで鋼一郎とやり合ったデータのほかに、この一年祓刃で稼働していたムラクモたちの戦闘データが潤沢に蓄積されていた。
完成した百鬼たちは組み上げられた瞬間から、その全てが二級から一級隊員相当の戦力を持ち合わせるだろう。
製造ラインは順調。数を揃えるのも容易であった。それでも奈切は、ふと言葉を漏らす。
「それにしても、この二人って……いやぁ、ホント。忘れ形見ほど恐ろしいものもないね」
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