第8話  後日 あの日の短冊

 七夕祭りで賑やかな公園

 5歳と6歳の兄妹を連れて金魚すくいをしている。


「お兄ちゃん。

 水の抵抗を受けないように動かさないとダメだよ」


 5歳にしてはやたら上手い血か。


「ママまだ」


「ママは取り過ぎるからダメ」


 カンナがたこ焼きを持ってきた。


「ママ、金魚すくいやって」


「ママもやりたいんだけどね。

 ママがやると全部とっちゃうから、金魚屋さん破産しちゃうでしょ」


 金魚屋のおじさんがうなずいている。



 花火の時間が近づいて親子四人、池の柵に並ぶ。

 少し離れたところに短冊の付いた竹笹が目に付いた。


「覚えているか、初めて二人だけで花火行った日」


「覚えてるけど、どうしたの」


「前の日、よく藤木先輩に声かけれたな」


「レンが自分でなんとかしろって言うから行ったんじゃない」


「何話したんだ」


「緊張しすぎて何話したか良く覚えてないんだけど、たしかレンとケンカしたこと話したら先輩が」


「今日は七夕。

 神様も許してくれるから大丈夫」


「ってそれだけはよく覚えてる」


「ホント今でもあの頃の先輩尊敬できる」


「あとレンと行くのが良いって。

 それで駅の改札で待っていたの」


「そういえばあの時の短冊に何書いたんだ。

 見ようとしたら、マナーがどうとか言って蹴られたけど」


「それは墓まで持って行く」


「世界征服か。

 うっ」


 脇に肘が入った。


「どうせ忘れたんだろ」


 忘れるわけないし、レンには言わない。

 愛する二人を引き離して年一回だけ会うことを許した神様はなかなかのガンコ親父だ。

 きっと二人の思いは途切れると思ったに違いない。

 そんな神様に訴える私の決意表明だった。

 人を大切に思う「信」が当てられている黄色い短冊に

 「レンと一生居れますように」と


 夜空に花が咲いた。


 私はレンの脇に潜り込んだ。

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ハイスペックだが恋愛ポンコツな幼なじみにムチャブリされて一週間で世界が変わる 最時 @ryggdrasil

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