第6話 金曜日 短冊の色
練習中、ついカンナの方を見てしまう。
いつもと変わらない感じ。
外面は良い。
昨日、街中で俺を思いっきり蹴っている様子は誰も想像出来ないだろう。
帰り、校門へ向かうとなんと先輩とカンナが話しているのが見えた。
最初っから俺なんか頼るよりそうすれば良かったんだ。
少し歩く速度を緩めると、二人のところに着く前に二人は別れた。
やはりダメだったかな。
あれだけ言ったけど、逆に頼られなかったさみしさを感じた。
もし、今の話で先輩とカンナが二人で行くことになったらと思うと、残念というか悲しいというか、そうなれば良いと思っていたのが確かだと思うのだが、実際それが現実に目の当たりするとそういう感情になった。
俺はカンナが好きなんだなと思った。
タダの幼なじみと言うだけじゃない。
駅の改札を抜けると、カンナが七夕で飾られている竹笹に短冊を掛けているのが見えた。
今日は早いな。
そういえば今日、七夕だったなとカンナに話しかける。
「お疲れ。
何、書いたんだ」
「何でも良いでしょ。
それよりレンも書きなさいよ」
「はいはい」
適当な短冊をとって適当なことを書こうとすると
「青をとったわね。
まあ、いいんじゃない」
「何だよ」
「短冊の色にも意味があるのよ」
「へー。
青は?」
「何だったかしら」
「・・・」
怪しいな。
知っていてあえて言わない。
健康第一と書いた。
「はあ~
そんなこと書いて。
本来、学業などの向上や感謝を書くものだと思うのよね。
高校生がそんなこと書いて」
「別に書いちゃいけないって訳でもないだろ」
「それはそうだけど。
人の気持ちがわかるようになりますようにって書いたら、青い短冊にね。
あと、私への感謝は赤」
「それで、カンナは何書いたんだ」
「なっ、何でも良いじゃない」
「黄色だったか」
とカンナの短冊を探そうとすると
バンッ
「痛っ」
蹴りがきた。
昨日と同じところ。
声にならない声が出た。
「マナーがなってないわ。
人の短冊のぞき見るなんて」
「そんなマナーあったか」
「あるのよ」
「それより、お前に昨日蹴られたとこまだ痛いんだからな」
「大げさね。
手加減してあげているんだから」
「あれでか。
昨日の二発目はかなりの破壊力だったぞ」
「まあ、7割くらいいっていたかな。
本気出したらレンだって病院行き。
良くてもしばらく行動不能に陥るしそこまではどうかなって自粛しました」
「自粛?
蹴らなかったときに使ってくれ。
それで友人へのお詫びは何色の短冊なんだ」
「黄色かな」
「ちゃんと書いたか」
「書くわけないじゃない」
そんなやりとりがあってカンナと帰路につく。
昨日みたいなケンカが出来るのはこいつだけだ。
この関係は簡単には崩れない。
だから出来るんだ。
「さっき先輩と話していただろ。
どうだった」
「またのぞき見て。
用事があるみたい。
先輩もレンと行けって言うから、しょうがないから付き合ってあげる」
「あっ、ああ」
動揺してしまった。
嬉しいと思う。
「嬉しい?」
「別に」
「学園のアイドルカンナちゃんと花火デート、恨まれて刺されないようにね」
「よく言うよ」
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