第2話 火曜日 恋バナ 藁にもすがる
駅からいつものように自宅に向かって歩いていると今日も捕まった。
「レンお疲れ」
「お疲れ」
二日連続は珍しい。
まあいいけど
「たまには待っててくれても良いのに。
かわいい幼なじみを置いて先に帰っちゃうなんて」
「かわいいって自分で言うことか。
違う電車の時もあるだろ」
「そういうときは私を駅で待っていても」
「するわけないだろ。
気持ち悪い」
「大丈夫。
ストーカーとか言わないから」
「あたりまえだ。
今日は絡んでくるな」
「別に。
普通だよ」
「・・・」
何かあるな。
「ところで先輩元気」
「誰」
「わかってるでしょ。
藤木先輩」
「ああ。
元気も何もお前だって今日会っているだろ」
「種目違うし、どうかなって」
「それを聞いてどうするんだ」
「どうするって、そこ聞くとこ」
「聞くね」
「これだからデリカシー無い男は、嫌われるよ」
「いいよ」
昨日はやられたが、この話題では勝てる。
「藤木先輩。
優しいし、かっこいいし、速いし、成績もトップクラスだって言うし完璧じゃない」
「そうだな」
「私、大好きなんだけど」
「それはもう何回聞いたかわからないな」
「彼女いないんでしょ」
「そう言ってたよ。
自然に聞き出すのに神経使って疲れた」
「何でだろ」
「自分で聞いてくれ」
「無理に決まっているじゃん。
先輩と話すの凄い緊張するんだから」
「誰が見てもそれはわかる」
「でしょ。
だからかわいい幼なじみを助けると思ってお願い」
「はあ~ 何を」
就寝前、布団の中であいつのことを思い出す。
「はあ~ 何を」
「今週の土曜日花火大会あるじゃない。
先輩と行けたらなあって」
近所の池の公園である夏祭り。
昼間からイベントや屋台が出て、小さい頃は楽しみにして毎年行っていたが、最近は遠くから花火を眺めるくらいだった。
「・・・ 行けば。
ご自由にどうぞ」
「レン冷たい。
カワイイ幼なじみの相談なのに」
「相談?
つっこみどころだらけだけど、だいたいその相談を俺にするか」
「だって。
藤木先輩は競争率も難易度も高すぎるから無理だってみんな言うんだもん」
「それで、俺に相談ってのが間違っているな」
「そうよね。
私、相当追い込まれているわね。
こんなクズ
「クズは余計だな」
「私死んじゃうのかな」
「何の話だ」
「クズ藁と思ったらケブラー繊維だった。
ってのを期待しているの」
「だから何の話だよ」
「鋼鉄より強いの」
「わかったよ。
だけど残念ながら俺はクズ藁だよ」
「そんな自棄にならないで。
藁は藁でも束ねれば縄になるから」
「自棄になってねえよ」
「じゃあ。
どうすれば良い」
「普通に花火一緒に行きませんかって」
「バカじゃない。
それが出来ないから相談しているんじゃない」
「お前な」
「レンの宿題ね。
また明日」
「・・・」
まったく、一方的に言いたいことばかり言って、あげくに宿題って。
何様だよ。
あいつこそ人間のクズじゃないか。
もう、無視すれば良いと思うのだが、というか無視するべきだと思うけど、なんかどうすれば良いかなと考えてしまう自分がどうかしていると思う。
俺もあいつが好きなのかなと思ってしまう。
もちろん幼なじみとして長い付き合いがあるからだ。
そういえばいつから夏祭り行ってないかな。
小さい頃はあいつと祭りに行っていたな。
金魚すくいがやたら上手くて自慢してくるから俺も練習したけど、あいつには勝てなかった。
子どもだから仕方ないけど、手加減無用で一つのポイで数十匹すくったりしていたからな。
ある年からタダですくわせてもらって、金魚は返していた。
あいつがすくっているのを見る観客の人だかりが出来て、記録更新と拍手が巻き起こる。
一緒に居る俺もなんか誇らしげな気がしたけど、今考えれば異常だな。
あんな子ども居たら引くなw
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