003 一番、合理的な近道

 道は手を入れれば真っ直ぐになる。しかし曲がりくねった道こそ天才の道である。


 これ、凄く好きな言葉です。


 なんの話だって? あまり気にしないで下さい。単に好きな言葉って事ですから。


 兎に角。


 最近、良くネットで見られる、○○○になるには? やるべき事。みたいな記事。


 もちろん、言葉を換えて、○○○になりたいならば押さえるべき○つのポイントなどの類いの記事も、全部、ひくるめて疑問に思うのです。小説家に絞って言えば、小説家になる近道、こうするのが合理的なんていう感じのアレなわけですな。


 ソレは動画からアフリ記事までネットに溢れています。


 理詰めで合理的に近道をして速攻で小説家になれて、そして、どうするのかな?


 とです。


 いや、むしろ、その方法論のどれかでも正解であるならば、世界中の小説家志望の方が、全員、速攻で小説家になれるわけです。敢えて喩えるならばマルチ商法と一緒だと。ごく少数がやっている内は確かに儲かるかもしれません。しかし……。


 それが多数になると初めの方にやった方だけが儲かるってシステムになるのです。


 そして、


 ネットに溢れる動画やアフリ記事は広告収入を得る為の手段でしかないわけです。


 その、こうすれば○○○になれるって方法を書くのは。


 どんな方法論にしろ多数がやっている状況では、その他諸々以上にはなれません。


 そんな方法論を明かしている時点で、もう擦られまくったネタでしかないとです。


 いや、実は、そんな事は、どうでもいいのです。やりたい方、見たい方は、見れば良いし、合うと思ったら実践すればいいのです。ただ、私は醒めた目で見ています。そんな私だからこそ思うのです。それをテーマに今回の猫杓を進めますね。


 コホン。


 まあ、恒例の最初にですが、飽くまで私感ですので鷹揚な気持ちで読んで下さい。


 こんな事を思っている人もいるんだくらいの気持ちで、よろしく、お願いします。


 さてと。


 近道をして小説家になりたい方に、結論から言っておくと、どんな会社にでも就職して仕事して趣味で創作をした方が幸せだよって話です。それとも遠回りをして長い時間、苦労して天才になるしか、幸せになる方法はないと、私は強く思います。


 まずは、お金で言えば……、


 小説で稼ぐのと比べて、たとえアルバイトでも普通の仕事をした方が合理的です。


 ただ、多分、大方の創作者の方が、それを充分に分かってやっていると思います。


 いや、むしろ、分かっていないとするならば、実は、話が早くて、人生での創作に費やす時間での時給計算をしてもらえれば、それで話は終わるわけです。普通に仕事をした方が稼げると分かってやっているからこそ問題は難しくなるわけですな。


 賞を獲って(※賞金を稼ぎ)、ドカンと当てればでかい。


 お金を第一にして、稼ぎたい方は、そんな事を考えているんじゃないでしょうか?


 でも、これって、ヤバいくらい非合理的なんです。だって、ドカンと当てられるのは、ごく一部、それこそギャンブル。文無しで、わらしべだけ持ってラスベガスまで行って国家予算を稼いで帰ってくるほどの大勝ちしないと一山は当てられません。


 いや、むしろ、創作している間の生活費を考えれば……、


 一山を当てる為に一山以上を捨てなければならないです。


 ギャンブル自体、非合理的なのに、一山以上を捨てるって、コスパ、悪すぎです。


 やっぱり、普通に生きるのが、一番、合理的だと思います。幸せに生きる為には。


 次に考えられるのが、目立てて、ちやほやされる、つまり、有名になれるというものですな。ここには他者から尊敬されるというものも入ります。ただ、これも合理的に近道をと考えるならば、実は、その道は閉ざされていると言わざるを得ません。


 小説で賞を獲って書籍化されたとします。


 そして、


 2019年の総出版数は71903冊となります。少し古いデータですが。もちろん紙の書籍だけの話です。ちなみに一ヶ月にすると5992冊。一日にすると196冊です。この中の1冊になるわけです。貴方の書籍化された本はです。ふむっ。


 もちろん、出版された本の中には有名な大御所も、多数、含まれているわけです。


 その中で、新人でしかない貴方の書籍化された本を、読者は、どう見つけるのか?


 貴方の本は本屋さんでは本棚に置かれたとしても奥の方で隅っこが当たり前。当然、平積みなんて夢のまた夢。まあ、大きな有名な賞でも獲っての話題の出版となれば、もしかして、なんて可能性はありますが、普通はないです。それは天才の所業。


 だからこそ自分が書いた本を読者が見つける事は凄く難しいと言わざるを得ない。


 思うに、


 小説投稿サイトで、自作を発表しても、なかなか読まれない状況と似ていますね。


 それが、一般市場なのか閉鎖されたコミュニティなのかの違いだけだと思います。


 少しだけ補足しておけば一般市場の方が、より状況は厳しいとだけ。


 加えて。


 合理的に近道を、と考えるという事は、天才になる事を放棄してしまっています。


 天才にはなれないという事は爆売れして有名になれるような本を書く為には強く運に左右されます。いや、むしろ運だけとも。宝くじを、10枚、買って、10枚とも全てが一等当選という確率よりも低いものを引き寄せる爆運が必要になるのです。


 では、何故ゆえ、天才になる事を放棄していると言えるのかですが。


 敢えて小説ではない例を挙げます。その方が分かりやすいので。絵を巧く描く為の近道として、こんな情報がありました。一冊の画集を買って、そこに載っている全ての絵を模写する事。これに間違いはありません。終わったあと巧くはなります。


 だだし。……追記されていた情報に問題があるのです。


 模写をする絵の作者は一人に絞った方がいい。その方が早く巧くなる。近道だと。


 ここに天才の道を閉ざす要素があるわけです。無論、この場合の天才とは才能のみで、のし上がるタイプの天才〔※私は、こういった方は天才とはみなしませんが〕は含みません。弛まぬ努力によって創られる天才への道が閉ざされているわけです。


 道は手を入れれば真っ直ぐになる。しかし曲がりくねった道こそ天才の道である。


 これは私の好きな言葉です。


 くどいかもですが。済まぬ。


 兎に角。


 まあ、この言葉自体、寄り道の大切さを説いてるわけですが、少しだけ補足しておきます。絵が巧くなる方法に戻ります。確かに、模写する絵の作者を一人に絞る方法は、一人に絞っているので、絵柄は固定され、その絵柄で早く巧くなれます。


 ただ、実は、コレってソレ以外の絵柄を捨てる方法なのです。敢えてでしょうね。


 その方が手っ取り早いから。


 ただし。


 固定された絵柄では巧いが、それ以外の絵柄で描いた場合、あまり巧く描けなくなる可能性があるわけです。もちろん、一人に絞って模写して極めたあと、それ以外の他作者の一人に絞って改めて一から模写するという方法ならばと思われましょう。


 でも、それって寄り道なんですよ。遠回りなわけです。


 多分に、


 俺は、この絵柄だけでいい。それで絵描きになれればと考えるのが近道なんです。


 まあ、今のは絵描きの話ですが、これは小説にも当てはまります。私自身、こうすれば小説家になれるという方法論を目にする機会が少ないので、どんなものがあるかは分かりません。しかしながら何をするにも近道をするには一点突破が基本。


 長い時間をかけて努力して自分の実力を上げるのは近道とは言えないからですね。


 だとするならば合理的に近道をして小説家になっても天才と呼ばれるものになれない。だから、先の話に戻り、爆運がないと読んでももらえない状況になるのです。なので、有名になれるは、合理的に考えて近道をしていてはなれないと言えます。


 まあ、私は、地道に努力して実力を上げるのが一番の近道だと思っていますから。


 では、その次に考えられる事はと言えば?


 自分が書いた小説で、多くの方を楽しませたい、というものではないでしょうか。


 加えて、


 好きな事を仕事にして自分も幸せに生きていきたい、ソレも併せて。


 これは直ぐに答えが出ます。好きな事を仕事にしてはいけない。以上です。いや、正確には天才にならなければ好きな事を仕事にしてはいけないとなります。何故ならば小説の話で言えば、それが仕事になれば締め切りが必ず付いてまわります。


 調子が悪くて、書きたくなくても、締め切りが迫ってこれば書かねばなりません。


 締め切り前までに作品を仕上げなくはなりません。それがプロです。


 むしろ、


 プロとは締め切りまでに作品を仕上げ、また締め切りを設定され、その締め切りまでに、また仕上げる。その繰り返し。その上で多くを楽しませねばなりません。ここで間違って欲しくないのが、楽しませるではなく楽しませねばならないなのです。


 飽くまで、作者主体の楽しんで欲しいではなくて……、


 読者主体の楽しませてねを満たさねばならないのです。


 書きたくない時にでも書かねばならないも幸せに生きる為にの非合理なのですが、楽しませてねを満たすも、また非合理極まりないわけです。つまり、楽しんで欲しいの場合、作者の楽しい、を、これって面白くない? と提示できます。


 しかし。


 読者主体の楽しませてねを満たす場合、読者は何に興味を持つか、読者は何を求めているかを第一に考えて、作者の、これって面白いよね、は封印せざるを得ません。つまり、作者自身がこれって面白いよねって思って書く事が難しくなるのです。


 無論、ここでも天才ならば自分自身の面白いよね? と読者のソレが合致します。


 だからこそ多くの方に楽しんで欲しいと好きな事を仕事に生きていくという理想を達成して、且つ、自分が幸せに生きていく方法を両立させる為には天才になるしかないわけです。そして、やはり、ここでも近道はしない方が近道だという事です。


 長い時間かけて努力して天才になるのが、一番の合理的で近道だというわけです。


 そそっ。


 ここで、断っておきますが。


 ずっと分かりやすくする為に単に天才と表現してきましたが、実のところ、天才は幸せに生きていく達人という意味で使っています。常日頃、その意味で天才を使っているので。なので、才能のみで、のし上がっていくを天才とは思わないとも。


 そんな感じですか。嗚呼、めっちゃ長くなってしまった。今回、そんな気がする。


 済まぬ。


 てかっ、


 長い時間をかけ、長い間、たとえ評価されなくても努力を続ける事は本当にしんどい事だと思います。無論、そんな時、こうすれば○○○になれるよと言わればフラフラと、そっちの方にいってしまうのも分かります。無論、私も、そうですから。


 だからこそ、疲れ果てた時、へし折れそうな時、ソッと思い出して欲しいのです。


 フッと。


 道は手を入れれば真っ直ぐになる。しかし曲がりくねった道こそ天才の道である。


 とです。


 チャオ。

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