【テンプレその六】一難去ってまた一難

 勢いよく開かれたドアから現れたのは、義理の母だった。


 え、なにこの親子。立て続けにやってくるなんて怖。これが運命共同体ってやつ?


「ウチの子に何を吹き込んだのかは知らないけど、今後一切関わらないでくれる?」

「「え……」」


 いや吹き込むも何も突撃してきたのは貴女の娘ですけどとは言えるわけもなく。


「あの子は未来の伯爵夫人なのよ!貴方達みたいな家の荷物とは関わるべきではないの」

「「ほーん?」」


 とりあえずセージアとは今後一切関わるなって解釈でおーけい?


「「だが断る!!」」

「話を聞いてたのかしら?セージアはいずれルーシオと結婚して、この家を切り盛りをしていくの。貴方達みたいなのとは格が違うのよ」

「「ルーシオ誰やねん」」


 この家を切り盛りって。やっぱりこの義母、家の財産をまだ虎視眈々と狙っていやがったのか。


 それにしても、ルーシオis 誰。


「話をそらさないでくれる?自分たちの兄の名前すら知らないなんて冗談、少しも面白くないわ」

「「すみませんでしたー」」


 お兄ちゃん、ごめんね。今まで名前を覚えてなくて。べべべべ別に、変な名前だなんて思ってないからね。謝っている相手はあくまで兄であり、義母ではないのであった。


 ……つまりこの義母は兄妹で結婚させようとしているということ?まあ血は繋がってないし不可能ではないか。


 それにしても今日は家族のメンバーの名前を二人分も覚えることになるとは。え?覚えてるのが普通?そ、そうなんだ。へぇー。


「とにかく、ウチの子には金輪際関わらないで!」


 そう言って立ち去る義母。


「今度こそ嵐が去ったね……」

「だな」


 眠気はすっかり覚めてしまった。だが、この状態から眠ってこそ睡眠のプロフェッショナルである。


 ということで。


「「おやすみなさい」」


ドタドタドタドタドタドタバーン!


 もうええて。さすがにキレるぞ?というかノックぐらいしろや。セージアだけだよノックしてくれたのは。


「家庭教師を呼ぶらしいな」

「「……」」


 野生のクソ親父が現れた!さあどうする?

▶たたかう

▶にげる


 選びたい選択肢は逃げる一択なんだけど、袋小路だから無理という絶望感。


「ふん。まあ、せいぜい励むように」

「「……」」


 兄と父の間の情報伝達速度、遅すぎないか?報連相って知ってる?義母と妹を見習おうぜ。数秒後だったぞあの二人がやってくるときの時差。それはそれで怖いか。やっぱり見習わないでくれ。


「「「…………」」」


 あのさあ、用が済んだなら帰ってくれません?部屋から一刻も早く出ていって欲しいのですけど。


バーン!


 思いが伝わったのか、はたまた視線に負けたのか、父は派手に扉を閉めて去っていった。この家の人、みんな扉の扱い雑すぎ。もっと優しく扱ってよ。


 今度こそ、今度こそ眠っていいよね?


ゴーンゴーンゴーン。


 時計の音が鳴り響く。もうこんな時間?夕食食べに行かないとじゃん。


「眠り損ねた」

「あいつら絶対許さねえ」


 こうして私たちはボロ……ではなく趣のある廊下を通り、夕食を食べに向かうのであった。

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