【テンプレその五】妹の襲来

 突如私達の部屋に現れた義理の妹殿。普段の夕食時の態度からおとなしい子だと思っていたが。もしや勘違い?魔法の練習で庭を爆破するくらいだし、結構アクティブなのだろう。


「いるなら扉を開けてくださいよお。って」


 妹殿の視線が宙に行く。まるで、見てはいけないものを見てしまったかのような反応。


「あ、あ、二人ってそういう関係で!?え、近親そ……、あ、いや私は二人の意思を尊重?しますケド」


 そういえば、私達はさっきまで惰眠を謳歌する気満々だった。つまり、ベッドの上にいた。しかも、私達はこの家の序列最下位。部屋が広いわけもなく。そうなればベッドを置くスペースも狭いわけで。要するに、ベッドは一つ。そのベッドに二人でいたら、そう見えなくもない……?いや、見えねえだろさすがに。


「「何勘違いしとんじゃボケェ」」

「あ、意外とお口が悪い」

「俺は別に!コイツとそういう感じじゃねえよ!」

「そうよそうよ!今は微塵も何とも思ってないんだからね!」

「は、はあ」


 勢いよく言いすぎたのか、妹殿が気後れしている。


「何の用があってこの部屋に来たの?」


 今まで全く接触がなかった妹殿の襲来である。きっと重大な理由があるに違いない。


「用は特にないですね」

「「いやないのかよ!!」」

「アレですよアレ。兄弟なかよくしようぜー的な?」


 わぁすごく浅い理由。聞いたのが馬鹿だった気がする。


「「出口はあちらです。どうぞお帰りください」」

「部屋から追い出そうとしないでくださいよお」


 何だろう。この妹殿、例の女神様と似た雰囲気を感じる。うっすらポンコツ味を感じるような。


「え?女神のように美しい?ありがとうございます!!」

「「ひとことも言ってねえよ」」


 うん。この子、女神様と同じ人種だね確実に。


「ですよねさすがに。私ごときが女神様と同格なんて烏滸がましいですよね。あの方は私より遥かに美しいし」

「あれ?妹ちゃんももしかして女神様と会ったことある感じ?」

「妹ちゃんなんてそんなあ。距離遠いですよ。セージアって名前で呼んでください!!」

「セ、セージアも女神様と会ったことあるのか?」


 義理の妹殿、セージアって名前なのか。初めて知った。


「勿論会いましたよ!この世で最も美しい方でした!」

「「ヘ、ヘエ」」

「何ですその目。私は転生するときにお会いしたのですが、本当に素敵でした。その感じだと、お二人も転生したくちですか?」

「「そうそう」」

「にしても、めちゃくちゃ息ぴったりですね。さすが双子。前世でも双子だったんですか?」

「「違うよー」」


 私たちは前世では別に双子ではなかった。強いて言うなら腐れ縁?縁はとんでもなく強いとは思うよ。


「にしても、第四期転生者の六人のうち、三人も同じ家なんて」

「半数が我が家って割合高すぎるよな」

「もしかして六人ともこの家の関係者だったりして」

「「「ま、そんな訳ないか」」」


 この頃の私たちはまだ知らなかった。フラグを見事回収し、六人ともこの家系だったなんてことになるなんて。とはならないことだけは断言しておこう。もう少し先、具体的には一年後の学院に通い始めた頃には分かるのだが、残り三人のうち二人はそもそも国外の人間……人間?だったとだけ述べておく。


「ということでトキ、シキ姉様。私はそろそろ自分の部屋に帰ります。またお話ししましょうね」

「何で俺だけ呼び捨て」

「ではさようなら!」

「しかもスルーしやがった」


 こうして、妹殿、ではなくセージアの襲来は幕を閉じたのだった。


「やっと嵐が去ったな……」

「だね」

「「じゃあ、今度こそ寝るか!!」」


ドタドタドタドタバーン!


 廊下を走り抜け、思い切り扉が開く音が響き渡る。どうやら私たちが睡眠をとるのは、もう少し先になりそうだ。

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