【テンプレその二】兄弟の序列

 昼寝のつもりだったのに目が覚めたら朝だった。まあ、仕方ないよね。だって私、幼児だもん。


「さて、ここで俺達にとって一番大事なことを思い出した」

「大事なこと?」

「そう、ズバリどちらが兄、または姉なのかだ!」

「……!!」


 双子にとって、どちらが年上なのかは死活問題である。古来よりこのことで争われてきた。私調べでは、ね。根拠?そんなものは知らぬ。


「俺が」「私が」「「年上だよね!!」」


 そして交錯する視線。見る者が見れば、この場の争いがいかに白熱しているかわかるはずだ。


「俺!は!お前より先に母のお腹から出たの!だから兄!」

「お腹から出たのが遅い方が、先に胎内では発生してるもん!私が姉!」

「は?それ、昔の考え方じゃなかったか?今の日本の常識は、先にお腹から出たやつが年上なんだよ!」

「そもそもここは日本じゃないでーす。つまりその理論は通じなーい」


 話は一向に進まない。こうなったら、最後の手段である。これを使えば、確実に私は姉になれる。


「ここは!私達の精神年齢で決めよう」

「こんな争いしてる時点で、俺もお前も幼稚さで言えば精神年齢同じだろ」


 急なマジレスやめろ。だが許そう。勝利を確信している私は、寛大な心を持っているからな!


「ちっちっち。精神年齢とは、精神的に生きた日数!」

「はい??」

「そして、前世では私の方が誕生日が早い」

「お前、まさか……!」

「生きた日数は、私の方が多い。つまり、私が姉」

「どうしよう反論が思い浮かばない」


 私の完全勝利である。


「私のことは『お姉様』とお呼びなさい!そして貴方のことは『弟』と呼ぶ」

「いや、普通に名前で『トキ』って呼べよ。お前のことは『シキ』って呼ぶからな」

「リピートアフターミー!『お姉様』!」

「人の話聞けよ」


 しばらくはこのネタをすっていく所存である。飽きたらやめるけどね。


「ところで弟よ」

「なんだよ」

「私達って、この家の序列、最下位だったりする?」

「もしかしなくてもそうだな」

「じゃあ一番上は誰だろ」

「兄じゃないか?順当に考えて次期伯爵だし」

「いやそれなら現伯爵の父親(笑)は?」

「使用人達からの信用度が終わってる。そんでもって兄の方が父より優秀」


 父親……お前、いったい何をしたらそんなに嫌われるんだよ……。理由はだいたい想像つくけどさ。


「私、考えたんだ」

「何を?」

「これからの方針」

「どんな方針?」

「現状維持!」

「それ、昨日却下してたじゃん。」

「考えるのすら面倒くさくなったの!」

「……」


 あ、何か呆れた顔された。それにしても、無言で見つめないで欲しい。圧が怖い。


「採用!」

「あ、却下される流れじゃなかったのねこれ」

「よく考えたら天界でも同じことしてたしそれでいいかなって」

「「とりあえず、心赴くままに現状維持しながらだらけるか!!」」







 そして、9年の時が過ぎた。その間に―――特に何も起きなかった。言えることはただ一つ。


「「さすがに暇すぎる!!」」

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