【第一章】テンプレな家庭事情

【テンプレその一】記憶を思い出すと大抵知恵熱出る

「「あ。転生してる」」


 そう気がつくとすぐに、頭が重くなって。私達は気を失ってしまった。







「「……知らない天井だ」」


 意図せずハモってしまった。というか、ハモってしまったことはこの際関係ない。それよりも重要なことがある。大抵の人にはしょうもなくて、でも私達にとっては重要なこと。


「テンプレの言葉を言ってしまった」

「俺としたことが!!一生の不覚だ!!」


 よくある台詞を吐いてしまったことへの敗北感である。


「そんなことはさておき!」

「さておき?」

「現状確認!」

「確認!」

「「始めるぞー!!」」


 先程ハモったことといい、息ぴったり。やはり今世では双子になったからだろうか。それとも前世からの絆か。


「まずは年齢!五歳!」

「赤ちゃんスタートではないんだね」

「ある程度動ける年齢なのは女神様の配慮か?」

「ありえる」

「次に家族構成!」

「父・義母・兄・義妹!」

「プラスの俺達二人で六人家族だな」

「前世は一人っ子だったから新鮮!」

「そして最後に家柄!」

「伯爵家!」


 今世はまさかの貴族である。いや、転生もので貴族になるのはわりとテンプレじゃないか。


「しかも不味いのはさ」

「家庭環境がドロドロなとこだよね」

「しかもその内容があまりにもよくある話すぎて」

「どんな行動をしてもなにかしらのラノベと同じ動きになってしまう」

「「さいっあく」」


 そんなドロドロ家庭環境について30秒で表すと。


「俺達双子が産まれた瞬間に母親死亡」

「これにより私達は兄に憎まれる」

「しかも母親死亡直後に父親は後妻を連れてくる」

「兄、父を軽蔑」

「あと、後妻こと義母は父の実子である兄と俺達双子を憎んでるな」

「各方面から憎まれてる私達双子」

「家庭事情複雑なのテンプレすぎて草」


 付け足すと、ここは腐っても伯爵家なので使用人はいる。腫れ物扱いされてるけど。


「つーか、前世思い出す前の俺達、かなり図太くね?」

「嫌がらせに耐え抜く、というかスルーしてたしね」

「もともとの性格の問題なのかもな」

「まあ、嫌がらせが嫌がらせになってないときもあったし」

「腐った豆が食事に出されたときは驚いた」

「奇跡的に納豆みたいな状態になっててビックリした」

「しかも結構おいしかった」


 この世界に大豆らしきものがあるとか驚きである。一般的な転生もので苦労して探すものが簡単に登場するなんて。


「これからの方針も考えよ」

「よくあるパターンは、お家の実権を握る」

「家族と和解するとかもあるよな」

「それか家出して冒険とか」

「ならば、俺達はそれらを避けなければならない」


 これらを回避した選択肢を考えるのは難しいな。全部当てはまらないようにするとかできるだろうか。


「敢えて何もしない。何も行動しない。現状維持とか?」

「確かにそれならテンプレじゃないかもだけど」

「だけど?」

「暇すぎるだろそんな生活」

「それは確かにそう。でも、代案も思い浮かばない」

「どうする?」

「さあ。わからないし一旦寝る」

「幼児は寝るのが仕事だもんね。おやすみ」


 こうして解決案もないまま眠りについたのであった。

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