【テンプレその五】女神様は友達がいない

「「暇!!!!!」」


 転生するまでにやるべきことが終わってしまった私達。暇すぎて死にそうになっていた。


「そんなに暇なら、さっさと転生してくださいよ」

「「それは嫌だ」」


 暇潰しになるものはないかな。トランプとか。


「トランプくらいなら作れますよ?ほら」


 そう言う女神様の手元にはトランプが。伊達に女神を名乗ってる訳じゃないね。さすが。


「何する何する?ババ抜きとかしようぜ!」

「女神様は心読むの禁止でやってね!チートすぎるから」

「えっえっ」

「「どうしたの?」」

「私も参加……して良いのですか……?」

「「良いに決まってるよ」」

「ありがとうございます……!実は私、トランプをしたことが無くて。そもそもやる友達もいませんし。ここに来る人間はみんなさっさと転生してしまうので」


 今にも泣き出しそうな女神様。思考が社畜じみていると思うのは私だけだろうか。


「たくさん遊ぼう!」

「そして俺達が転生するまで思い出づくりをしよう!」

「それは出来ません」


 まさかの拒否。さっきまでの感動ムードはどうしたのか。


「お二人はこの空間に長居しすぎました。このままではあと少しで魂が消滅してしまい、転生しそこないます」

「あと少しって、具体的には?」

「だいたいババ抜き一回分の時間ですね。だから、さっさとババ抜きをしましょう!」

「「ババ抜きはするんだ」」

「はーい、カード配りますね」


 そして配られたカードを見る。割と良い感じで、手札の数は少なかった。ふと女神様の方に目を向けた。


「女神様、手札多すぎじゃない!?」

「イカサマを防止するため、女神としての力を抑えたので!」

「それにしても運悪すぎだろ」


 そんな感じでババ抜きは進んでいき……負けたのは私だった。


「何で私負けたの!?最初は手札が少なかったのに!!」

「お前、顔に出過ぎなんだよ」

「心を読むまでもありませんでした」

「もう一回やりたい。今度こそリベンジを」

「無理です。これ以上ここに留まると魂が消滅してしまいます」

「ならこのまま消滅する!そしたらテンプレからも逃れられるし!」

「駄目です。私にも立場があるのです。お二人の魂が消滅してしまえば、上司であるより高位の神に起こられます」


 事情がすごく人間くさいな。


「さあさあ、あの扉の向こう側に行ってください。そうすればもう来世です」


 話しつつ私達の背中を力いっぱい押してくる女神様。怪力だな。


「急いで!天界に長居しすぎです!魂が消滅しますよ」

「天界?」

「この場所の名前です」

「初耳なんだけど」

「それよりも扉を抜けてください。本当の本当に時間が無い!」


 女神様は勢いよく扉を開け、私達を突き落とした。扱いが雑。


「何だかんだ楽しい時間でしたよ!お二人が次死んだときは、またトランプしましょうね」


 既に次死んだときの話をするのは、気が早くないか。


「さーよーな」


 女神様の声が遠ざかって行く。やがて何も聞こえなくなった。私がいるのは暗闇の中だった。ただただ暗くて、何もなかった。

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