【テンプレその二】ステータス振り

「今日こそは!転生してくださいね!!」


 ここに来てから、まだ体感で一日しか経っていない。まだまだ居座る所存である。


「おっとそういえば、大切なことを言い忘れてました」

「「大切なこと?」」

「ズバリ、転生特典についてです!」

「「……」」

「何故このタイミングで無言になるんです?」

「だって、ねえ?」

「これってどう足掻いてもテンプレから逃れられないよな」

「転生特典アリってラノベでよくある展開だし」

「かといって転生特典ナシの主人公もよくいるし」


 初っぱなから壁にぶち当たってしまった。どうすべきか。


「貰える物なら貰っておく精神で行きましょうよ?転生特典がついてくるの、今だけですよ?お得ですよ?」

「胡散臭いセールスマンみたい」

「失礼ですね。私は胡散臭くありません」


 いつの間にか茶番が始まっている件について。今日は茶番で時間を稼ごうかな。茶番のネタとかあったっけ。


「はいそこー!時間稼ごうとしないでください。転生特典についてなのですが」

「「ナニモキコエナイ」」

「このルーレットで内容を決めます」

「俺ら渾身のボケをスルーした……だと!?」

「イジリがいのある貴重な存在だと思ってたのにっ。ぐすん」

「早速ルーレット回しますよー。ストップって言って下さいね」


 場は非常にカオスを極めた。それはそれはカオスであった。誰一人として会話が噛み合わない。明後日の方向に向かってキャッチボールしようとしてサッカーボールをラケットで打った状況であった。


「何で誰もストップって言わないんですか!?もうルーレットを止めますからね」


 そしてルーレットをぶん殴って止めた女神様。まさか脳筋なのかこの女神様。ちなみにルーレットが止まったのは『以心伝心』と書かれた部分だった。


「この特典は、テレパシーを使えるものです!かといって、誰とでもテレパシーできるのはカオスですよね。ということで、お二人だけが互いにテレパシーできる状態にしましょう」

「「……」」

「相槌くらい打ってくださいよ!」


 相槌を打つ気力なんて無いよ。転生特典に抗えなかったことに対する悲しみに明け暮れているのだ。


「お次はステータス振りを行います!」

「これまた逃れられないテンプレじゃん」

「強くしすぎも平均狙いも弱くするのも、全部一通り出揃ってるもんね」

「あ、でもさ」

「?」

「ステータス振るときってさ、どの人も結局、暮らしやすさとか生きやすさとかを追及してるよな。なんというか、そのーうーん」

「つまり!私達は芸術的なステータス振りをすれば良いのか」

「芸術的?まあそんなところ。実用性を重視せず、いかに見映えや面白さを追求できるか。それを目指そうぜ」


 そうと決まれば芸術的なステータス振りを頑張ろう。ところでステータスの見映えって何?ステータスをグラフにしたときの見た目が綺麗か、とかかな。


「ではまず、MPとHPを決めましよう」

「「あるある要素来たー」」

「基礎のMPとHPは、それぞれ100まで決められます。」

「じゃあ俺はMP0、HP100にする」

「私はその逆でMP100、HP0にしようかな」

「ストーッップ!」


 女神様に止められてしまった。何故。


「この世界の魔力は、身体に欠かせない成分なんです。MP0だったらそれはもう死人ですよ!HP0だって生きてる人間じゃないですよ!」

「確かにゲームとかでHP0なったら死ぬもんな」

「なら私はMP77、HP23にする」

「俺はMP35、HP65にする」

「ちなみに何故その数値にするのですか?」

「「MPとHPを足したら100になってキリが良い」」

「しょうもないですね。聞いた私が馬鹿でした」


 しょうもないとは失礼な。こちとら芸術的なステータス振りに命懸けてるのだ。


「よし、MPとHPも決まったし一旦寝ようかな」

「まだステータス振り終わってませ」

「俺ら昼寝するわ。おやすみ」


 こうして女神様のツッコミをBGMにしながら、私達は眠りについた。

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