第32話 元貴族の冒険者、親友と恋人の間でもだえる
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スキルを失ったクリス。
記憶を失ったリコ。
白狼のユキ。
そして、フードと仮面で顔を隠してはいるが、
周りの情勢に明るく、皆のまとめ役のシン。
彼ら冒険者パーティーは話し合いの末、
街を出て、国境を越える事にした。
冒険者ギルド提携の食堂の席で。
「西の聖教国は、この国以上にスキル育成のシステムがしっかりしている・・・。
儀式に関してもスキルの開眼だけでなく、強化、封印、再生、
さらには今持っているスキルを放棄してからの新生など、広範囲にわたるそうだ・・・。」
というシンの言葉に、リコは
「スキル再生・・・。
けど、そういうのって相当金がかかるんじゃねえの?」
と、しごく現実的な懸念を口にした。
「それ以外にも方法はある・・・。
聖教国には特別なダンジョンがあり、その最深部にたどり着いた者は改めてスキルを手にする資格が得られるらしい・・・」
「・・・嘘くせ~」
そう言った後、リコはクリスのほうを見て、
「ま、皆が行きたいって言うなら俺は付き合うぜ。
どうすんだクリス?」
と、スキルを失ったクリスに聞いてきた。
「うん・・・、スキルうんぬんは別にして、
聖教国には行ってみたい・・・かな」
「何だ、何かあるのか?」
「母さんの故郷なんだ」
と、クリスは言った。
クリスの亡き母親、元シスターのマリア・・・。
それを聞いたリコは、
「そっか・・・」
とだけ言って、何か納得したように、
「なら行こうぜ!
スキル取得にお袋さんの故郷訪問、それに観光やダンジョン挑戦と、旅の理由としては十分じゃねえか!」
そう結論を下して、半年ぶりにエールの杯を掲げてみせた。
そんなリコを見ながら、
クリスは以前の彼を思い浮かべていた。
今の人格になる前の、
蘇生前の少女の姿をしていたリコを・・・。
今のリコが嫌いなわけではない。
むしろ、パーティーのムードメーカーである今の彼を、
クリスは一番の男友達だと思っている。
以前のリコは、
ともすれば内にこもりがちで、自己犠牲的で、危なっかしくて・・・、
華奢で、可愛くて、それでいて色っぽくて、何かすごくいい匂いがして・・・
(・・・あれ?)
何を考えているんだ僕は・・・?
クリスは自分で自分の甘酸っぱい感情に振り回され、
ひたすら恥ずかしくなった。
そして・・・、
(リコ・・・)
もう、逢えないのかな・・・。
~~~~~~~~~~~~~~
それは出発を数日後に控えた、宿屋での夜の事だった。
灯りの消えた部屋のベッドで、
眠りに落ちていたクリスだったが、
「クリス君」
と、すぐ近くで呼ぶ声に目を覚ました。
見ると、隣のベッドで眠っていたはずのリコがそばに立っている。
「リコ・・・どうしたの?」
横になったまま、体の向きだけ変えてクリスが尋ねる。
だが、リコは何も言わず、クリスを見つめながら静かに微笑んでいる。
いつもの彼らしからぬ、愁いを帯びた
まさか・・・。
「もしかして・・・リコ?」
クリスは思わず跳ね起きた。
そう、それはリコだった。
蘇生前の・・・、クリスにとって大切な・・・。
【つづく】
_______________
閲覧ありがとうございます!
そして・・・、
『再びクリスの前に現れた元の人格のリコ、略して元リコ!
果たしてその理由は!?』
どうか、この先にあるコメント欄にて、
あなたの中に浮かんだアイデアを一言お贈りください!
『夜這い』とか、『トイレの付き添い』とか、『最期のお別れ』とか・・・。
なるべく、この最新話を読まれただけで参加可能な文章内容とお題にしましたので、
どうぞよろしくお願いします!
――という願いにお応え頂きまして、
本当にありがとうございました!
新しいお題は最新話にて・・・!
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