第31話 元貴族の冒険者、仲間と新たなスタートを切る
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「何だよこれ・・・スカート?
えっと・・・クリス、だったよな?
あんた、宿の部屋に女と同居してんのか?」
「・・・君の着替えだよ、リコ」
「はあ?何言ってんだよ。
男の俺がこんなもの履くかよ。
まさか、女装が趣味だったとか言わないよな?」
「・・・」
「・・・マジで?」
「マジだよ。
正確には、たぶん・・・心は女の子だったんだよ、以前の君は・・・」
「堪忍してくれよ~・・・」
と、床に膝をついて頭をかかえるリコ。
ちなみに、服はクリスのものを着ていた。
――蘇生後、記憶をなくしたリコを、クリスは二人の定宿である部屋に連れていった。
そして、彼の持ち物を見せてみたのだが・・・。
駄目だった。
それどころか、自分が女子として生きていた事に相当なショックを受ける始末。
その様を見て、クリスは思った。
(これは、とても言えないな・・・)
自分とリコが、そういう関係だった事を・・・。
今のリコにそれを言ったら、どうなるか・・・。
恋人を失った悲しみをこらえて、クリスは話題を変えた。
「それで、リコ。
さっきも言ったけど、僕と君、それとユキとシンの四人でパーティーを組んでいたんだ。
僕たちとしては、君に変わらずいてほしいけど・・・。
でも、もし今の君が、冒険者をやる事に抵抗があるなら、僕が援助するから、他の道を選んでもいいけど・・・」
「・・・」
顔を上げてクリスの説明を聞くリコ。
冒険者として、これからもクリス達と一緒にいるか。
それとも、別の生き方を選んでクリス達と別れるか・・・。
やがて、リコは口を開いた。
「なあ、クリス・・・。
正直に答えてほしいんだけど・・・」
「う、うん」
クリスは緊張した。
もしかして、自分たちの以前の関係に気づいたのでは・・・。
だが、リコは言った。
「俺、足手まといになってなかった?
パーティーの一員として、ちゃんと役に立っていたのか?」
不安げに上目づかいにクリスを見るリコ。
その表情が以前のリコと重なり、クリスは鼓動が早くなる。
同時に、リコと共に戦った情景が脳裏を駆け巡った。
「僕たちにはリコが必要だったよ」
クリスがそう言うと、
リコは視線をそらして、頭をかいた。
「そ、そうか」
「うん。
『天才』と『努力』を混ぜて、可愛い形にしたのがリコだったよ」
「そうか・・・」
スン・・・と、鼻白んだリコだが、
クリスにはその変化が分からない。
ふう、とため息をひとつつくとリコは言った。
「じゃ、引き続きよろしくな」
「え?」
「何だよ?
パーティーにいていいんだろ?」
「いいの?」
「こっちのセリフだよ。
いいのか、今の俺で?
間違いなく力は落ちているぜ」
「うん・・・!」
クリスはうなずいた。
その夜は、パーティー全員で宴会となった。
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「・・・何で俺のベッドにいるんだよ、クリス」
「いや、リコが酔って、僕のベッドに入ってきたんだよ・・・」
翌日の朝、
目が覚めた二人は、同じベッドで寝ていた。
しかも、半裸のリコがクリスに抱きついた格好で・・・。
「なあ、クリス・・・。
ひょっとして、前の俺ってお前と・・・。
いや、何でもない・・・」
問いかけた疑惑をリコは途中でやめた。
そんな思い悩むような姿を見て、
クリスは、
「はは、いや~相変わらず寝相が悪いよね、リコって!」
と、わざと明るく言った。
「そ、そうか。
そうだよな・・・」
と、リコも納得したようだった。
「当分、酒はやめるよ・・・」
と、つぶやきながら・・・。
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それからしばらくの間、
クリス達パーティーはリコの蘇生代支払いのために、結構な数の依頼をこなした。
同時に、ダンジョン探索も並行してだ。
幸いなことに、記憶を失ってなおリコの戦いの勘は健在だった。
技術も、身体が憶えているのか、徐々に今までと同じ動きを取り戻していった。
パーティー全体の連携も、以前の通りスムーズになってきた。
だが、残念ながら、
今までのような急成長はもうない。
リコの蘇生と引き換えに、
クリスが『研磨』のスキルを失ったからである。
「ごめんなクリス。
俺のために・・・」
リコがそう言うと、クリスは、
「その前にリコは僕の命を救ってくれたんだから、おあいこだよ」
と、何の屈託もない笑顔を見せた。
パーティーとして借金を抱えたシンも、
「仲間を助けるためだ。
問題ない・・・」
と、仮面の奥からきっぱりと言った。
そんなクリス達の好意に応えるように、
リコは以前にもまして自己の研鑽に努めた。
自分が『交換』のスキルを持っていると知ると、
それを戦闘に利用できるほどに強化させた。
ボウガンに『念』を込め放ち、
矢が当たった相手と自分の位置を入れ換えるほどに・・・。
――パーティーが蘇生代を払い終わったのは、
魔柱討伐から半年後だった・・・。
既にリコの冒険者ランクはB級にまで上がっていた。
何でも、この街のギルドにおける最短記録らしい。
クリスはC。
身体能力はリコと同レベルかそれ以上と判断されたが、
『交換』のようなプラスアルファがないのがこの差だった。
「もし『研磨』のスキルがあれば、リコさんと同じB級だったのでしょうけど・・・」
と、ギルド受付のレナが残念そうに言った。
何はともあれ、
『借金返済』完了のその日、
パーティーは久々の宴会となった。
「カンパーイ!」
と、杯を合わせるクリス、リコ、そしてシン。
冒険者ギルド提携の特別な食堂で、
白狼のユキも一緒に食事ができた。
床下に置かれたプレートのごちそうを嬉しそうに平らげている。
シンは仮面越しに、器用にエールをちびちびとやり、
リコはクリスと同じ果実水だ・・・。
しばらくして、シンが言った。
「旅に出ないか・・・?」
【つづく】
_______________
閲覧ありがとうございます!
そして・・・、
『突然、旅の提案をしてきたパーティーリーダーのシン。
果たして、その目的は?』
どうか、この先にあるコメント欄にて、
あなたの中に浮かんだアイデアをお贈りください!
簡単な一言で構いません!
『修行』とか、『帰郷』とか、『俺より強い奴に会いに行く』とか・・・。
なるべく、この最新話を読まれただけで参加可能な文章内容とお題にしましたので、
どうぞよろしくお願いします!
――というお願いにお声を頂きまして、
本当にありがとうございました!
新しいお題は最新話にて・・・!
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