第30話 元貴族の冒険者、大切なものを失う
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「クリス、あなた達の仲間であるリコを蘇生するには、
あなたのスキルを捧げる必要があります」
寺院の安置所、リコの遺体の前で神官は言った。
「死者に近しい者のスキルを蘇生の力として使う・・・、
それが『
感情のこもらない、事務的な口調で・・・。
だが、クリスは何の
「分かりました、お願いします」
と言った。
あらゆるものを磨く『研磨』のスキル・・・、
クリスを・・・いや、クリス達パーティー全員の実力を磨き、数か月で別人のように跳ね上げた力・・・。
それを失えば、もう今までのような急成長はありえない。
だが、
(構わない・・・)
そうクリスは思った。
同性とはいえ、彼にとってリコは・・・
最愛の人だ。
それに、
このスキルはもう、自分に沢山のものを与えてくれた。
『友魔』の白狼ユキ。
頼れる先輩冒険者のシン。
ギルドでいつも親身に相談に乗ってくれる、職員のレナ。
そしてリコ・・・。
母マリア亡きあと家を追い出され、
ずっと求めていた居場所をこのスキルは与えてくれた。
スキルより、力よりも大切な、仲間と過ごす居場所を・・・。
(その仲間を取り戻すためなら・・・)
スキルに何の未練があるだろうか。
そんなクリスの決意を見て取ったパーティーのシンも、
何も言わず仮面を付けた首を縦に、クリスに肯定の意を示した。
そんなシンに、大剣を背負ったAランク冒険者のヴァンが言った。
「仲間のために、ためらいなくスキルを捨てる・・・か。
あの時のお前と同じだな」
「・・・」
シンは何も言わない。
「いい仲間を持ったな、シン」
「ああ・・・」
仮面の下から、静かにシンは答えた。
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そして聖魔法『
「クリス、右手で私の左手を握ってください。
手から私に力を流す気持ちで」
と、神官。
「はい」
右手は力を放出し、左手は受け止めるというのが基本らしい。
つまり、クリスの右手から流れる『スキル』の力を、
神官が左手で受け止める。
そして、その力を右手でリコに・・・。
横たわるリコの胸元に、神官は右手を当てる。
すると、神官の右手が光りだし、その光がリコの全身を包み込む。
「『我は求める。
光よ、神の奇跡を示せ・・・!』」
「リコ・・・」
詠唱をする神官。
その手を握る、クリスの力がすがるように強まる。
(どうか、どうか間に合って・・・!)
「『
神官がそう叫んだ瞬間、
リコを中心に、辺りはまばゆい光によって白く包まれた・・・。
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――結論から先に言おう。
『
それも五体満足の完璧な状態で。
普通は手足の一部、ひどい時には内臓の機能がいちじるしく麻痺した状態で蘇るものらしいが・・・。
神官いわく、
「この者、リコと言いましたか。
遺体にもかかわらず、何故かその身体は生きた人間のそれのままでした。
・・・それが大成功の理由でしょう」
それは、クリスがスキルを手放す前に使った『研磨』の影響だったが、
神官はもちろん知りようがなかった。
「良かった・・・、リコ、本当に・・・」
寺院の寝台で、静かに寝息をたてているリコの手を握りながら、
クリスの涙腺は開きっぱなしだった。
ユキもそばで尻尾を振っている。
・・・そのクリス達に聴こえないように、
パーティーのシンはヴァンと話をしていた。
「今回討伐した三体の魔柱だが、一体分の素材はお前たちパーティーのものになるようギルドに交渉しよう。
それを売れば、それなりの額になるはずだ」
とヴァン。
それで蘇生の料金の穴埋めをしろ、という事か・・・。
「・・・すまない」
「当然の報酬だ。
それでも・・・、蘇生の料金には及ばないだろう。
今回の依頼・・・、お前たちには完全にマイナスだな・・・」
金銭面だけでなく、その戦力も・・・。
「だが、生きている・・・」
シンのその言葉に、
ヴァンは少し驚いた顔をした。
そして、少し悲しそうな口調で言った。
「報われてほしいよ、お前たちみたいな奴こそ・・・」
そのままヴァンは、大剣を背に寺院をあとにした。
その後ろ姿を見つめていたシンだが、
「シン!
リコの目が開いたよ!!」
というクリスの声に、
ヴァンの事はあっさり頭から抜け落ちた。
寝台のリコは、ゆっくりと上半身を起こしている。
シンもすぐに駆け寄り、パーティーはリコの復活に歓喜した。
「リコ!」
たまらず叫ぶクリス。
そのクリスにリコは言った。
「・・・誰?」
リコは記憶を失っていた・・・。
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閲覧ありがとうございます!
そして・・・、
『スキルを失ったクリスに、記憶を失ったリコ!
彼らパーティーはこれからどうするのか!?』
どうか、この先にあるコメント欄にて、
あなたの中に浮かんだアイデアをお贈りください!
簡単な一言で構いません!
『引退』とか、『解散』とか、『大麻所持』とか・・・。
なるべく、この最新話を読まれただけで参加可能な文章内容とお題にしましたので、
どうぞよろしくお願いします!
――というお願いにお声を頂きまして、
本当にありがとうございました!
新しいお題は最新話にて・・・!
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